被災者生活再建支援金申請に伴う被災者の負担軽減を求める会長声明
令和5年7月14日からの大雨(以下,「令和5年7月豪雨」という。)により,秋田県内各地で住家への浸水等の被害が発生した。秋田県によると,県内の住家被害は全壊11棟,半壊2892棟,一部損壊28棟,床上浸水741棟,床下浸水3367棟に上っている(令和5年12月26日発表)。
1 令和5年7月豪雨による被害を受け,秋田県は,秋田市,能代市及び五城目町に対し,被災者生活再建支援法の適用を決定した。
2 秋田県は,同じ住宅内に複数世帯が居住する場合には原則として世帯ごとに申請が認められるべき生活再建支援金について,当初,世帯ごとの申請を受け付けず,本来は不要な別生計を証明する書類を求めるよう秋田市等に指示していた。
令和6年2月,秋田県は,内閣府等による指摘を受け,原則として世帯ごとに申請が可能であるとして上記の取り扱いを変更した。
3 前項の取り扱い変更は災害発生から半年以上が経過した後になされたものであり,この間に誤った算定により生活再建支援金が支給されてしまったこと等により影響を受ける世帯は秋田県の調査によっても83件に及び,多くの混乱を生じさせるものとなった。
4 秋田県は,上記取り扱い変更後,各世帯に事情を説明し,あらためて申請を促すこととしていたが,その際の説明では,誤った算定により支給された過払金を一旦返還し,その後に世帯ごとの新たな支援金申請を行うよう案内している。
このような秋田県の説明により,対象となる被災者は,既に受給済みの生活再建支援金の一部を返金するのでなければ本来認められるべき申請が行えないこととされ,既に生活再建支援金を使ってしまい返金ができない場合には本来認められるべき申請が行えない等,困難な状況に置かれることとなっている。
5 生活再建支援金は,原則として世帯ごとに申請が認められるべきものであり,他世帯の返金等が申請の条件になると解すべき合理的な理由はないものというべきである。
また,令和5年7月豪雨被害に対する生活再建支援金の算定誤り等について,対象となる被災者らには何ら落ち度はなく,このような事態に至った理由は当初の秋田県の対応にあったのであるから,算定誤りの是正のために被災者らに過大な負担を負わせることは相当でないというべきである。
したがって,当会は,秋田県,内閣府及び公益財団法人都道府県センターに対し,誤った算定により支給された生活再建支援金返還を条件とせずに世帯ごとに生活再建支援金申請を受け付け,速やかに被災者の支援に全力を尽くすことを求めるものである。
以上
2024年(令和6年)9月11日
秋田弁護士会
会 長 石 田 英 憲