最高裁による旧優生保護法違憲判決を受けて、同法の被害者の全面的救済を求める会長声明

2024年7月30日 公開

 最高裁判所大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は、2024年7月3日、旧優生保護法により不妊手術(優性手術)を強制された被害者らが国に賠償を求めた5件の上告審判決で、同法の違憲性を認め、国に損害賠償金の支払いを命じる初めての統一判断を示した。
 最高裁は、「約48年もの長期間にわたり、国家の政策として、正当な理由に基づかずに特定の疾病や障害を有する者等を差別してこれらの者に重大な犠牲を求める施策を実施してきた」などと国の責任を明確に認め、旧優生保護法は憲法13条及び14条1項に違反しているとして、違憲判決を下した。
 旧優生保護法に基づく強制不妊手術を巡っては、2018年以降、全国各地で被害者らが提訴していたが、国は、不法行為から20年の経過で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」が適用されるなどとして争ってきた。しかし、最高裁は、被害者の請求権が除斥期間により消滅することは「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない」とし、国がその主張をすることは「信義則に反し、権利の濫用として許されない」と厳しく断じた。
 旧優生保護法は、「優性上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことなどを目的として1948年に制定され、1996年に母体保護法に改正されるまでの48年間で、全国で約2万5000件の不妊手術が実施された。被害者らは、子を産み育てる自由などを奪われ、その後も長年にわたって差別や偏見に苦しんできた。
 こうした被害者らの声がようやく届き、国は、2019年4月、被害者に320万円を支給する一時金支給法を制定したが、周知不足や立証困難等の理由により、2024年5月末現在、全国での認定件数は1,110件にとどまっている(こども家庭庁統計)。本県でも、330件以上の不妊手術が実施されたが、一時金支給の認定がされたのはわずか26件(相談件数は262件)であり、未だ多くの被害者に救済の手が届いていない実情にある。
 一時金支給法は、その請求期限を2029年まで5年間延長する改正がされたが、一時金の支給額が被害者救済には不十分であること、被害者の配偶者や人工妊娠中絶を受けた者は支給対象外であること、被害者への周知方法が徹底されていないなどの問題点が当初から指摘されてきた。
 政府からは、総理大臣が被害者らに直接面談して謝罪した上、今後、同法の改正ないし新法の整備により、補償の対象者拡大や補償金額の増額を検討する意向が示されたが、被害者らへの周知方法等の徹底など、これまで課題とされたことを払拭して徹底した制度改正と真摯な運用が求められている。
 当会では、これまでに、県内の障害者施設への聴き取り調査や被害者相談会などを実施してきたが、この度の最高裁判決を受け、改めて、1人でも多くの被害者が救済されるよう活動していくとともに、国に対して、全面的な被害回復が図られるよう一時金支給法の改正を含めた被害者救済の法整備と差別偏見のない社会の実現に向けた取り組みをすることを強く求める。

2024年(令和6年)7月30日
 秋田弁護士会     
  会長 石 田 英 憲

会長声明・決議・意見書 一覧【秋田弁護士会】
スマートフォン版サイトを覧る