憲法記念日を迎えての会長声明
本日は、1947年(昭和22年)5月3日に日本国憲法が施行されてから76回目の憲法記念日です。
日本国憲法は、立憲主義を基本理念とし、基本的人権の尊重、国民主権及び恒久平和主義を基本原理とします。これらの基本原理は、人類普遍の原理であり、とりわけ恒久平和主義は、多くの国民が犠牲となった戦争を二度と繰り返さないために護り続けていかなければならないものです。
昨年2月24日、ロシア連邦がウクライナに対して軍事侵攻を開始しました。同年3月8日、当会は、ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻と核兵器による威嚇に対して強く抗議し、国連総会決議の即時受け入れを求める会長談話を発表しました。また、同年10月22日、「あらためて憲法9条改正問題を考える~ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえて~」と題する市民集会を開催し、市民の皆様と共に軍事侵攻を踏まえた平和問題を考えました。ところが、軍事侵攻が開始されてから1年以上経ったものの、未だ落ち着きをみせておりません。
他方、昨年12月16日、政府は、国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画(安保三文書)を閣議決定し、相手領域に反撃する能力(反撃能力ないし敵基地攻撃能力)を保有して活用していく方針を明記しました。しかし、従前政府は、個別的自衛権の発動は専守防衛に限って認められると憲法9条を解釈してきた上、閣議決定は、国民の代表機関である国会での議論を経ずになされるものです。
ロシア連邦のウクライナに対する軍事侵攻により、両軍の兵士だけでなく、民間人においても多数の犠牲者が出ており、断じて看過できるものではありません。プーチン大統領が核兵器の使用を示唆し、日本の一部からは、平和主義の下で唯一の被爆国として非核三原則を揺るぎなく堅持すべき立場にあるにもかかわらず、核兵器廃絶の方向性に反する意見が出ています。さらには、安保三文書の閣議決定によると、日本がひとたび反撃ないし攻撃に出た場合、相手国は日本に対して反撃をすることが予想され、武力の応酬となり、ひいては恒久平和主義が禁じようとした悲惨な戦争の惨禍を再びもたらすことにつながりえます。
当会は、本年の憲法記念日にあたり、改めてロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻に対して強く抗議するとともに、恒久平和主義をはじめとする日本国憲法の基本理念と基本原理を確認してこれを堅持するための活動に尽力する決意を表明します。
2023年(令和5年)5月3日
秋田弁護士会
会長 嵯 峨 宏