最高裁判所大法廷決定を受けて、改めて、選択的夫婦別姓制度の導入を求める会長声明
2021年6月23日、最高裁判所大法廷は、2015年12月16日最高裁大法廷判決を引用した上で、婚姻の際に夫婦同姓を強制する民法750条について、憲法24条に違反するものではないと判断した。
しかしながら、人の姓は、名と相まって、個人を識別する機能を有するとともに、その個人を表す人格の象徴であり、人格権の一部を構成するものである。それゆえ、姓を維持することは、自己のアイデンティティ確保のため、憲法上も十分に尊重されなければならないが、現行法制度上は、婚姻をする際は、夫婦双方が姓を維持する選択肢は認められていない。姓の変更を望まない者同士の場合は、婚姻をしないか一方が自己のアイデンティティ喪失を伴う改姓をするかの選択を余儀なくされる。現在においても、婚姻する夫婦の大部分が夫の姓を選択しており、多くの女性が職業上も社会生活上も様々な不利益を被っている。また、これらの問題は、近年広がりつつある婚姻前の姓の通称使用によっては、根本的に解消されない。
したがって、婚姻の際に夫婦の一方に姓の変更を強制する現行法制度は、憲法24条が保障する婚姻の自由及び個人の尊厳を侵害し、両性の本質的平等に反し、同条に違反するものである。
また、夫婦の姓のあり方についての我が国の議論状況を見ると、1996年に法制審議会により選択的夫婦別姓制度を導入する改正法律案要綱の答申がなされたが、四半世紀も経過しながら、国会での議論が進んでいない。
これまで、国連の女子差別撤廃委員会は、女子差別撤廃条約締結国である日本に対し、夫婦同姓を強制する民法750条の是正を重ねて求めてきたが、国会は、何ら対応してこなかった。
この四半世紀の間、我が国における家族観、実際の夫婦や家族のかたちは多様化してきており、選択的夫婦別姓制度の導入に向けた議論の必要性がますます高まってきている。
2021年の最高裁決定においても、夫婦の姓の制度のあり方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄であると指摘し、2015年の最高裁判決に重ねて、国会での議論に言及している。
国会が、選択的夫婦別姓制度に関する議論及び導入について、これ以上、先延ばしにすることは許されない。
当会は、これまで、2010年、2013年及び2015年の会長声明で、民法750条の改正を求めてきたが、改めて、国会に対し、選択的夫婦別姓制度について議論を行い、民法750条を改正して、同制度を導入するよう強く求める。
2021年(令和3年)12月21日
秋田弁護士会
会長 山 本 隆 弘