オンラインを活用した接見交通を求める会長声明

2022年1月26日 公開

1 現在,刑事手続のIT化の議論が,法務省の検討会(「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」。以下,「本検討会」という。)で進められている。
2 本検討会においては,書類の電子データ化,発受のオンライン化,捜査・公判における手続の非対面・遠隔化などが議論されているが,この中にビデオリンク方式を利用した被疑者・被告人との接見交通が議論されている。
3 現在,日弁連では,逮捕段階における公的弁護制度の創設が議論されている。逮捕段階からの充実した弁護活動を可能にするためには,逮捕されて間もない時点における迅速な接見を可能にするため,オンラインを活用した接見交通を実現する必要性が高い。また,身体を拘束された被疑者・被告人が十分な防御準備をするためにも,書類の授受を含む接見交通のオンライン化の必要性も高い。
特に,当会が対応しなければならない秋田地方裁判所管轄地域は,遠方に位置する警察署・拘置所が存在し,接見に多大な負担と時間がかかる。また,降雪期においては陸路を利用した接見交通に重大な支障が出ることもある。このような場合,取り調べに対する対応方針などを含む被疑者にとって必要な助言を弁護士が迅速に行えない危険がある。
4 検討会の議論では,オンラインを活用した外部交通制度の必要性は概ね肯定されているようである。他方,なりすまし防止の必要性から,発信元となる場所(アクセスポイント)について慎重に検討する必要があることも異論はない。しかし,人権擁護の観点から重要なのは,逮捕後速やかに被疑者とアクセスできることである。そして,現在の高度なIT技術をもってすれば,法律事務所,弁護士会館,法テラスなど,捜査機関側の所管施設以外の場所から弁護士が被疑者・被告人にアクセスすることの適正性は,十分に担保できると考えられる。したがって,アクセスポイントの種類と量については,今後も引き続き人権擁護の観点を踏まえた充実した議論がなされるべきである。
5 刑事手続のIT化の議論は,何よりも被疑者・被告人の人権保障を拡充するという観点で進められるべきである。
当会は,オンラインを活用した接見交通の実現に向け,本検討会にて更に具体的な議論が尽くされることを期待する。

2022年(令和4年)1月26日
秋田弁護士会         
会長  山 本 隆 弘  

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