旧優生保護法下における人権侵害に対する全面的な被害救済を求める会長声明

2022年3月16日 公開

 旧優生保護法に基づく強制不妊手術に対する国家賠償請求訴訟で,東京高等裁判所は,2022年3月11日,2月の大阪高等裁判所に続き,同法を違憲であると判断し,国に対し,被害者である控訴人らに対する損害賠償の支払を命じた。同判決は,優生政策により「不良」との烙印を押し,子をもうけるか否かという幸福追求の重要な意思決定の自由を奪って不妊手術を強制した優生条項について「差別的思想に基づくものであって正当性を欠く上,目的達成の手段も極めて非人道的なものであり,憲法13条及び14条1項に違反することは明らかである。」と断じ,また,「被害者が障害者差別等の厳しい環境下に置かれ」てきた事情や国の無策を指摘して,これまで権利救済の壁とされていた除斥期間について,著しく正義公平の理念に反するためその適用を制限する判断を下した。
 判決言渡し後,平田豊裁判長は,「差別のない社会をつくっていくのは,国はもちろん,社会全体の責任である」との所感を述べられた。私たちは,この言葉を改めて自分のこととして噛みしめ,今後この問題に向き合っていくことが必要である。
 国は,両判決の判断を尊重して,現在係争中の同種訴訟の全てについて早期解決を図るべきである。また,「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」は,被害者の救済には不十分であるから,今後早急に制度を改正して,被害を償うに足りる賠償・補償を実現し,対象者の拡充や請求期限の撤廃によって,全ての被害者を救済しうる制度に作り替えなければならない。被害者の高齢化が進んでいることに鑑みると,これらの対応は急務といえる。
 当会は,これまで被害の実態調査や情報収集をはじめ被害者の救済活動に取り組んできた。今後も,人権侵害や差別の解消に向けた諸活動に積極的に取り組んでいく所存である。

2022年(令和4年)3月16日
秋田弁護士会
会 長  山  本  隆  弘

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