地方消費者行政の維持・強化のための対策を求める意見書

2025年3月25日 公開

 消費者庁は、創設(平成21年)以来、地方消費者行政を推進・強化するため、相談員の人件費にも充てられる交付金を地方自治体に交付し、消費生活センターの相談体制の整備や消費者被害防止の取組を支援してきた。
 ところが、地方消費者行政強化交付金(旧地方消費者行政推進交付金)が、令和7年度末をもって、一部の例外的延長措置を除いて基本的に終了となる。
 全国の消費生活相談件数は年間90万件前後に高止まりした状況が続いている。秋田県においても、年間6000件前後で推移しており、さらに全相談に占める市町村への相談割合は着実に増加しており、地方公共団体の相談窓口が住民に身近な相談先として定着しつつある。
このような状況下で交付金が終了することにより、相談窓口の維持が困難になったり、交付金で実施してきた啓発・消費者教育、消費者被害防止対策等の事業が困難となるなど、地方消費者行政が後退・縮小するおそれがある。特に秋田県においては、消費者行政予算の自主財源は他の同規模の地域に比較して著しく低い状態が続いており、交付金の終了による地方消費者行政への影響が大きいと考えられる。
 また、消費者庁には地方支分部局がないことも相まって、地方公共団体は国の消費者行政の一端を担っている。特に、PIO-NETは、全国の消費生活相談情報を集約し、国や地方公共団体の消費者啓発情報や事業者規制の端緒情報として活用されるほか、国の消費者法制度見直しの情報としても活用されるなど、国の消費者行政を支える柱となっている。
 そのPIO-NETの刷新時期が令和8年に迫っており、新システムの運用において、地方公共団体に新たな財政負担が生じることが危惧されている。PIO-NET登録業務は消費生活相談情報を国と地方公共団体全体で共有するための不可欠のシステムであるから、その経費はこれまでどおり国において負担すべきものである。

 よって、国において、地方消費者行政の拡充・強化を図るため、次のとおり要望する。
① 地方消費者行政強化交付金の交付期限を相当期間延長するか、少なくとも、同交付金と同様に消費生活相談員の人件費にも充てることができる交付金等の財政支援措置を早急に講ずること。
② PIO-NETの刷新・消費生活相談のデジタル化により地方公共団体に生じる費用を国において負担する措置を講ずること。

以上


       2025年(令和7年)3月25日
        秋田弁護士会
         会長 石 田 英 憲

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