成年年齢引下げに伴う消費者被害防止のための実効性ある施策の実現を求める会長声明
民法の成年年齢を20歳から18歳に引下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「本法律」という。)が2018年(平成30年)6月13日に成立し、施行日である2022年(令和4年)4月1日まで、わずか6か月余りとなった。
従来より、成年年齢の引下げにより、特に18歳、19歳の若年者が未成年者取消権(民法5条2項)を行使できなくなり、消費者被害が拡大することへの懸念が指摘されてきた。
そこで、2018年(平成30年)の本法律の成立に際しては、参議院法務委員会において附帯決議がなされ、そこでは、①知識、経験、判断力の不足などを利用して勧誘し契約締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設すること(法成立後2年以内)、②若年者の消費者被害の防止・救済のための必要な法整備を行うこと(法成立後2年以内)、③マルチ商法等による消費者被害の実態に即した対策について検討し必要な措置を講ずること、④消費者教育を質量共に充実させること、⑤18歳、19歳の若年者への周知徹底や社会的周知のための国民キャンペーン実施を検討すること、⑥施行日までにこれらの措置の実施、効果、国民への浸透について調査・検討し、その状況を随時公表することなどが求められた。
しかし、成立から3年余りが経過し、施行までわずか6か月余りとなった現時点においても、いずれの施策も未だに十分に実現されていない。特に、未成年者取消権を喪失することになる18歳、19歳の若年者の消費者被害拡大に対応する施策は急務であるが、そのために必要不可欠な施策である前記①のつけ込み型不当勧誘取消権の創設は、附帯決議に明示された期限である2年を経過しているにもかかわらず、その目途も立っていない。
このままの状況で2022年(令和4年)4月1日を迎えれば、18歳、19歳の若年者への消費者被害拡大という懸念が現実化することは明らかである。
よって、当会は、国に対し、前記①のつけ込み型不当勧誘取消権の創設をはじめとする前記附帯決議に示された被害防止措置を早急に実現することを強く求めるとともに、仮にこれを実現できない場合は、未成年者取消権の行使可能年齢を引下げる部分について施行時期を延期するよう求める。
2021年(令和3年)9月1日
秋田弁護士会
会長 山 本 隆 弘