最高裁判所への申入書
令和2年12月23日
最高裁判所
長官 大 谷 直 人 殿
秋田弁護士会
会長 山 口 謙 治
申 入 書
第1 申入れの趣旨
大曲簡易裁判所における判事1名の常駐を堅持していただくよう申し入れる。
第2 申入れの理由
1 本年5月1日から大曲簡易裁判所の判事が1名減員となっているが,これにより大曲簡易裁判所に裁判官が常駐しなくなった。それまでは大曲簡易裁判所では,長年,裁判官が常駐し,角館簡易裁判所に填補する火曜日以外の4日間は,民事・刑事訴訟事件,民事調停事件などを担当していたが,同日以降は非常駐となり,水曜日の1日のみ,湯沢簡易裁判所の裁判官が填補して同事件を担当することになった。
また,この大曲簡易裁判所の減員(以下,「本件の減員」という)に伴い,角館簡易裁判所及び横手簡易裁判所でも裁判官の填補日が減少するなどしており,本年5月前後での県南の裁判官による填補の変動状況については,別紙のとおりとなっている。
2 本件の減員により,大曲簡易裁判所以外の他の簡易裁判所でも,裁判官の填補が特定の曜日に限定されるため,期日の調整が難しくなる,期日が入りづらくなるなどの影響が生じている。
具体的には,刑事の身柄事件において公判期日が通常より2週間程度遅れて入る,民事調停事件において調停期日が通常より1か月程度遅れて入ることがあった。また,弁護士の代理人が就いていない当事者からは,法律相談の際に,調停期日が1か月以上先に入るようになったなど民事調停事件が利用しづらくなった趣旨の話が出るようになった。
3 本件の減員による影響は,大曲簡易裁判所のみならず他の県南の裁判所にも及んでおり,県南の地域住民に対する司法サービスの低下につながり,裁判手続の利用に影響を与えるなど,紛争解決機関としての需要に応えられなくなるおそれがある。
裁判の迅速化に関する法律は,裁判手続の一層の迅速化を図り国民の期待に応える司法制度の実現を目指しているが,裁判官配置の都合により開廷日が少ないために期日が入りにくく先延ばしになることは,裁判迅速化の阻害要因となる。刑事裁判においては,裁判所の裁判官配置の都合により開廷日が少ないために公判期日がなかなか入らず公判が遅延する事態は,被告人の基本的人権の侵害につながる。さらに,昨今では裁判所機能の合理化のために支部機能が一部削減される動きが見られるところであり,過疎地域においても国民の裁判を受ける権利を損なうことがあってはならない。
4 よって,当会は,本件の減員によって懸念される様々な悪影響を解消させるために,従前通り,大曲簡易裁判所における判事1名の常駐を堅持していただきたく申し入れる次第である。
以 上
・別紙