現行憲法改正国民投票法のもとで国民投票を行うことに反対する会長声明

2018年5月2日 公開

日本国憲法が施行されてから71周年を迎える中、今年中に国会において憲法改正の発議がなされ、国民投票が実施される可能性があるとの報道がなされている。

憲法改正の国民投票は、主権者である国民が、国の最高法規であり、かつ基本的人権を保障し統治機構の基本を定める憲法のあり方について意思を表明するものであり、最も重要な主権行使である。したがって、国民が自由に自己の意見を表明することができ、憲法改正案及びそれに対する意見の周知・広報が公正・公平になされるなどして、主権者の意思形成が適確に行われ、かつ国民投票の結果に国民の意思が正確に反映される方法でなければならない。

しかし、2007年(平成19年)に制定された日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正国民投票法」という。)には、以下に述べるとおり、多くの問題が存在する。

まず、憲法改正国民投票法には最低投票率についての規定がない。そのため、投票権者の中のごく少数の賛成によって憲法が改正されるおそれがある。そのような過程を経て改正された憲法は国民の意思を十分かつ正確に反映しているものとはいえず、改正憲法の正当性・信頼性に疑義が生じる。

次に、憲法改正国民投票法では、国会による発議後、国民投票までの期間が最短で60日とされている(同法2条1項)。憲法改正は将来の長きに亘って国のあり方を左右する重大な手続であるため、国民が憲法改正案について十分な情報交換及び意見交換を行い熟慮した上で投票することが不可欠である。しかし、前記の60日という期間は明らかに短く、主権者の適確な意思形成が図れない。

他にも、国民投票運動のための有料意見広告放送について投票期日14日前までは何ら規制されておらず(同法105条)、資金力の差によって憲法改正賛成派と反対派の各広告放送の時間帯や回数、期間、広告の質に格差が生じ、公平性が害されるおそれがあること、公務員や教員の地位利用による国民投票運動禁止についてあいまいで不明確な規定がなされており(同法103条)、表現の自由等に対して重大な萎縮効果が生じることも、問題点として挙げられる。

当会は、同法制定以前から、そして同法成立後も、これらの問題点を指摘し、同法の抜本的な見直しを求めてきた。その後、2014年(平成26年)に同法の一部が改正されたものの、前記のとおり同法には多くの問題点が残されたままである。それらの問題点が解消されないまま国民投票が実施されれば、その結果は国民の意思を正確に反映したものとはならない。

よって、当会は、国会に対し、改めて憲法改正国民投票法の問題点の解消を求めるとともに、現行法のもとで国民投票を行うことに反対する。

 

2018年(平成30年)5月3日

秋 田 弁 護 士 会

会 長  赤 坂  薫

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