司法試験合格者数の見直しを求める会長声明

2017年12月19日 公開

 本年9月に発表された司法試験の最終合格者は1543名であった。受験者が減少したことにより,合格率が平成28年と同程度であれば本年の合格者は1500人を下回るとの予測もされていたが,結果は,法曹養成制度改革推進会議の決定(平成276月)が示した年間合格者1500人程度との目標に合わせた数であった。

 2001年の司法制度改革審議会意見書に基づき,年間1000人程度であった司法試験合格者数を政策的に増加させた結果,20024月には18,851名であった弁護士数は,本年4月に39,027名となり,この15年あまりで約2万人増加し,実に2倍以上となった。他方で,裁判所の新受全事件数は2003年の6,115,202件をピークに減少に転じ,2016年には3,575,887件まで減少しており,新規業務分野の開拓の努力にもかかわらず,弁護士の需要は全体として減少してきた。

 このような需要と供給のアンバランスの結果,弁護士の所得の減少や不安定化が生じ,弁護士の公益活動に支障を生じかねない程度に至っている。また,司法修習修了後に採用事務所が見つからず就職が難しいという問題や,OJT(実務を通じた訓練)が不足してきているという問題も生じている。さらに,弁護士になったとしても法科大学院を含めた法曹養成課程において費やされる多大な労力と高額な費用に見合う所得を得られないかもしれないとの懸念が広まり,法曹志願者や司法試験受験者は,深刻な程度にまで減少してしまった。有為な人材が弁護士を目指さず,また,弁護士の訓練が不足するということになれば,弁護士全体の質の低下を来すことになり,司法制度の屋台骨を揺るがすことになる。弁護士の公益活動の減少を含め,これらは全て国民の利益を損なうことにつながる。

 今後も,毎年1500人の司法試験合格者が輩出されれば,20年後の2038年には,弁護士数は現在よりさらに2万人近く増加すると予測されている。他方,今後,我が国の人口は減少すると予想されており,弁護士需要はさらに減少してゆく可能性が高い。このままでは,弁護士の質の低下が現実のものとなりかねない。

 当会は,政府に対し,改めて,現実の弁護士需要に即し司法試験合格者数を見直すことを求める。

20171219

秋田弁護士会 会長 三 浦 広 久 

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