外国籍の調停委員・司法委員・参与員の採用を求める会長声明

2017年12月18日 公開

1 2003年10月に兵庫県弁護士会が、神戸家庭裁判所からの家事調停委員推薦依頼に対し、韓国籍の会員(弁護士)を推薦したところ、同家庭裁判所から推薦の撤回を求められたことに端を発し、最高裁判所はこれまで仙台弁護士会など六弁護士会から延べ30人以上に上る外国籍会員(弁護士)の調停委員への推薦の採用を拒否し続けている。また、2003年3月には東京弁護士会が韓国籍の会員(弁護士)を司法委員に推薦したところ、その採用が拒否され、2011年12月には岡山弁護士会が韓国籍の会員(弁護士)を参与員に推薦したところ、同じように拒否されている。このように2003年から外国籍会員の調停委員、司法委員、参与員の司法参加が閉ざされた状態が続いている。

 

2 この問題について、最高裁判所事務総局人事局任用課は、日本弁護士連合会の照会に対し、「公権力の行使に当たる行為を行い、もしくは重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とする公務員には日本国籍を有する者が就任することが想定されていると考えられるところ、調停委員・司法委員にはこれらの公務員に該当するため、その就任のためには日本国籍が必要と考えている」と回答している。

  しかし、法律にも最高裁判所規則にも調停委員、司法委員、参与員について日本国籍を要するとの規定はない。調停委員及び司法委員は、当事者の合意をあっせんし、解決に導くことをその職務内容とするものであり、参与員は裁判官に意見具申することをその職務内容とするものである。いずれも公権力の行使をするものでも、重要な施策に関する決定を行うものでもなく、これらに参画することを職務とするものでもない。

  家事調停や民事調停における調停事件、あるいは司法委員が参画する民事訴訟においては、日本国籍を有しない人が当事者であることもあり、こうした事件の場合、他国の文化と日本の文化の相違について身をもって感じている外国籍の調停委員、司法委員、参与員の知見が、異国で生活している当事者の共感を得て事件の解決に大きく寄与することもある。

  最高裁判所の対応は、調停委員、司法委員、参与員の具体的職務内容を問うことなく、日本国籍の有無で一律に異なる取り扱いをするものであって、国籍を理由とする不合理な差別であり、憲法14条、自由権規約26条及び人種差別撤廃条約5条の平等原則に反するものである。

 

3 この問題については、日本弁護士連合会は、2009年3月に「外国籍調停委員・司法委員の採用を求める意見書」、2011年3月には「外国籍調停委員任命問題について(要望)」をそれぞれ最高裁判所に提出しており、2011年7月に秋田市で開催された東北弁護士会連合会定期弁護士大会においても「日本国籍を有しない調停委員任命を求める決議」を採択し、1に述べた採用拒否された全国各弁護士会からは同様な会長声明が出されている。また、国連人種差別撤廃委員会では、2010年3月の最終所見、2014年8月の総括所見において、日本国籍を有しない者が調停委員として活動できるように日本国の見解を見直すことを勧告している。

  このように国内のみならず、国連からも最高裁判所に見直しの意見や勧告がなされているにもかかわらず、昨年10月から11月にかけ、大阪弁護士会、兵庫県弁護士会が推薦したそれぞれの外国籍弁護士の調停委員採用が拒否されており、現在に至るまで、長期間にわたって、日本国籍を有しない者の調停委員、司法委員、参与員就任は実現していない。

 

4 よって、当会は、最高裁判所に対し、国籍を理由とする不合理な差別を改め、民事調停委員及び家事調停委員規則、司法委員規則、参与員規則に定める要件を充足する者であれば、日本国籍の有無にかかわらず積極的に調停委員、司法委員、参与員に採用するよう求める。

                     2017年(平成29年)12月18日

                         秋田弁護士会

                         会 長  三 浦 広 久

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