いわゆる共謀罪を創設する改正組織的犯罪処罰法の成立に対する会長声明
本年6月15日,いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法が,参議院で可決され成立した。
本法による共謀罪の処罰は,内心の自由に踏み込むもので,表現の自由などの国民の基本的人権を侵害し権利行使を萎縮させる危険が大きい。しかも,その捜査のための通信傍受が常態化することで,捜査権限の濫用により適正手続に重大な脅威を生ずる危険もある。そのため,当会は,これまで4度にわたり,会長声明を発して本法の制定に反対してきた。
今国会の審議を通じても,本法により市民団体や労働組合等の正当な活動が捜査機関の恣意的な判断で捜査の対象とされ,基本的人権が侵害されるとの懸念は,全く解消されなかった。実際,衆議院通過後の世論調査では,衆議院での審議が不十分であった,法案への国民の理解が深まっていないという意見が多数を占めていた。加えて,国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏から,プライバシー権への制約のおそれなどの本法案に対する懸念を表明する書簡が提出されるとの経緯もあった。参議院においては,これらの国内外から表明された懸念や意見を踏まえ,慎重の上にも慎重な審議が求められていたはずである。それにもかかわらず,政府及び与党は,参議院法務委員会での議論を尽くさず,同委員会の採決を省略する異例な手法を用いて参議院本会議の採決に付し,本法を成立させた。
政府及び与党が,国内外から表明された反対や懸念を押し切り,国会における審議を十分に尽くさないまま,性急かつ強引に本法を成立させたことは,議会制民主主義をないがしろにするものと言わざるをえない。
当会は,基本的人権の擁護という我々の使命を果たすため,共謀罪処罰が恣意的に行われないよう注視し,また,全国の弁護士及び弁護士会と連帯して,本法の廃止に向けた取組を行う所存である。
2017年(平成29年)6月29日
秋田弁護士会 会長 三 浦 広 久