秋田県の最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明

2016年8月23日 公開

1 現在,秋田県の地域別最低賃金は,1時間695円(2015年10月7日効力発生)であり,全国加重平均である1時間798円を大きく下回っている。

2 地域別最低賃金は,中央最低賃金審議会における最低賃金改定の論議を受けて行われる各都道府県の地方最低賃金審議会での審議の結果を踏まえて,各都道府県の労働局長において定められるものである。

  我が国の最低賃金制度は,賃金の最低額を保障することにより,労働条件の改善を図り,もって,労働者の生活の安定等に資することを目的としている(最低賃金法1条)。近年では,非正規労働者の割合が増加傾向にあり,その結果,非正規労働者が家計を支える役割を担っている場合も多く,いわゆるワーキングプアと呼ばれる貧困層が広がり続けている。本県においても,非正規雇用労働者の割合は,34.9%(平成27年度労働条件等実態調査結果)にまで達している。

  こうした社会の現実を直視して,最低賃金制度を「すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網」(セーフティーネット)として実効的に機能させるためには,最低賃金でフルタイムで働いた場合にも,人間らしい生活を送ることができる社会を志向して,最低賃金額の引き上げが検討されなければならない。

  ここで,1日8時間,月22日間働いた場合,秋田県の現在の最低賃金額である1時間あたり695円をもとに計算すると,1か月の賃金額は12万2320円となる。

  しかし,この賃金額では,労働者が十分生活していけるだけの水準が確保されているとは到底言い難い。

3 また,最低賃金の地域格差が依然として大きいことも問題である。秋田県の現在の最低賃金額である695円と最も高額である東京都の907円とを比べると,その間に212円もの開きがある。

  かかる最低賃金の地域間格差の存在は,当県からの有為な人材の流出を引き起こしかねないと共に,人口減少に危機感を抱いている本県において,人口環流の障壁ともなりかねず,地域間格差の解消は喫緊の課題である。

4 最低賃金の引き上げの効果として,労働者の離職率を下げ,新規採用・訓練のコストを減らし,生産性の向上に繋がること,さらに,賃金が消費に回り地域的及び全国的に経済成長を刺激することが挙げられるが,このようなメリットからも,最低賃金の大幅な引き上げは正当化されるべきものである。

5 以上のことを踏まえて,当会は,秋田県労働局長に対し,秋田県の地域別最低賃金の大幅な引上げを図り,地域経済の健全な発展を促すとともに,労働者の健康で文化的な生活の確保を求めるものである。

2016年(平成28年)8月23日
 秋田弁護士会     
  会長 外 山 奈央子

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