憲法違反である安保法制法の廃止を求める決議

2016年2月26日 公開

昨年9月19日に成立した自衛隊法等の10法を一括して改正する「平和安全法制整備法」及び新法である「国際平和支援法」(以下併せて「安保法制法」という。)は,憲法に違反し無効である。したがって,当会は,国会に対して同法を廃止する立法措置を行うよう求め,政府に対して同法の規定に基づく措置を発動しないことを求める。
以上のとおり決議する。

2016年(平成28年)2月26日秋田弁護士会

決 議 理 由
安保法制法は,一昨年7月1日の閣議決定における憲法9条の解釈変更を経て,昨年5月15日に法案が国会に提出され,その後,同年7月15日に衆議院本会議において,同年9月19日に参議院本会議において,いずれも強行的に採決され,成立した。これは、日本弁護士連合会や当会をはじめとする全国の弁護士会、圧倒的多数の憲法学者や元最高裁判所裁判官,歴代の元内閣法制局長官など多くの法律専門家が法案の違憲性を訴え,国民の過半数が反対しているという世論調査結果をも無視した暴挙であった。

安保法制法は,以下のとおり,憲法に違反し,無効である。
第1に,安保法制法は,「存立危機事態」と認められる場合に,世界のどこであっても,自衛隊が米軍その他の外国軍隊とともに武力を行使することを可能としている。しかし,「存立危機事態」という概念自体が不明確であって,時の政府の恣意的な解釈によって日本を戦争行為に踏み出させかねない。これは,まさに憲法9条が禁じる「武力の行使による国際紛争の解決」を許すものであり,憲法に違反する。
第2に,安保法制法は,「重要影響事態」に該当すれば,自衛隊が米軍その他の外国軍隊の後方支援をすることを認めている。しかし,「重要影響事態」という概念が不明確であるばかりか,自衛隊の後方支援活動は,現に戦闘行為が行われている現場以外であれば,その危険がある地域でも可能とし,武器以外であれば弾薬の提供等までをも可能としている。かかる後方支援は,他国の武力行使との一体化と見られるものであって,憲法9条に違反する。
第3に,安保法制法は,「国際平和共同対処事態」に該当すれば,個別立法によらずに,自衛隊が協力支援活動等を行うことができるとしている。この協力支援活動等の対象には,国連が統括しない有志連合等による「国際連携平和安全活動」も含まれ,活動内容に「安全確保業務」や「駆け付け警護」が追加され,さらに,自衛隊に任務遂行のための武器使用を認めている。
しかし,自衛隊が,国際平和協力の名のもとに,有志連合等による国際紛争への介入に協力し,武器使用による安全確保業務,すなわち治安維持活動にまで従事することは,他国の武力行使と一体化するものであって,憲法9条に違反する。
第4に,安保法制法は,国際平和支援法を除き,国会による事前承認の例外を認めており,政府の考え方次第で国会の事前承認を不要とされかねない危険性を有している。加えて,国会での審議では,特定秘密保護法により十分な情報が提供されない可能性が高く,民主的コントロールが不十分である。
第5に,安保法制法は,徹底した恒久平和主義を定め,平和的生存権を保障した憲法前文及び第9条に違反し,立憲主義の基本理念に真っ向から反している。さらに,憲法9条の解釈変更により実質的改正をしようとした点は,国民主権の基本原理にも反している。

以上のとおり,安保法制法は憲法に違反し,無効であるといわなければならない。
したがって,当会は,国会に対して安保法制法を廃止する立法措置を行うよう求め,政府に対して同法の規定に基づく措置を発動しないことを強く求めるとともに,これらを実現するため,秋田県民及び国民とともに全力を尽くす決意である。

以上

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