消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明

2016年1月19日 公開
1 政府が「まち・ひと・しごと創生本部」内に設置している「政府関係機関移転に関する有識者会議」では,消費者庁と国民生活センターを徳島県に移転することが審議され,同会議は移転に関する基本方針を本年3月にも決定するとしている。

2 政府関係機関の地方移転を促進することは,東京圏への一極集中が是正されること,及び地方の活性化に資するものであり,このこと自体は評価できる。
 しかし他方で,政府関係機関の地方移転によって,当該政府関係機関が本来果たすべき機能が大きく低下することになっては本末転倒であり,移転対象機関の選定にあたっては慎重な検討が必要となる。上記有識者会議でも,政府関係機関の移転について,「中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関」,「官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関」や,「現在地から移転した場合に機能の維持が極めて困難となる」機関については移転がふさわしくないとの方針が示されているところである。

3 かかる観点からは,消費者庁及び国民生活センターを東京から地方に移転することは,消費者庁及び国民生活センターの機能を損なわせるものであって,妥当でない。
  そもそも,消費者庁は,消費者行政推進基本計画(平成20年6月27日閣議決定)に基づき,消費者の安全安心の確保という視点から,国民生活のあらゆる場面に関わる消費者問題に各省庁の縦割りではない立場で対処し国の消費者行政を一元化して推進する「司令塔」の役割を担うべきものとして創設されたものである。  
  すなわち,消費者庁の所掌事務として,消費者庁及び消費者委員会設置法4条2号では「消費者の利益の擁護及び増進に関する関係行政機関の事務の調整に関すること」とあるとおり,消費者庁は,各省庁の所管分野に広範に関連する消費者行政の実施のために関係省庁との総合調整・連携が当然に予定されており,関係省庁が行う法改正に対しても意見を述べ,消費者政策全般に関する消費者基本計画の作成・見直しを行い,その作業過程において各省庁関連部局との情報交換をしたり施策実施の要請を行う必要がある。また,消費者被害の発生や拡大防止のために,消費者安全法の規定(同法39条ないし42条)の活用により,他の省庁が所管する法律の権限の発動を迅速に働きかけたり,所管法・所管大臣がない,いわゆる「隙間事案」について直接対応したりすることも予定されているほか,消費者庁の所掌事務である,法案立案作業の過程では内閣法制局との綿密な協議,各政党との事前協議,国会議員への事前説明,国会関連委員会での審議対応など,頻繁かつ即時の対応が欠かせない。2013年(平成25)年暮れに発覚した冷凍食品への農薬混入事件に対する消費者庁による他省庁との密な連携に基づく迅速な対応は記憶に新しいところである。
   以上のように消費者庁がその機能を果たすためには,関連各省庁の密な連携が必須であり,霞ヶ関の各省庁に近接して消費者庁が所在し,関係部局の担当者との面談協議や資料提出要請等をいつでも行いうる状況にあることが不可欠である。
   したがって,他の省庁を霞ヶ関に残したまま消費者庁を地方に移転させることは,消費者庁に求められている機能を著しく損ない,消費者行政の停滞を招きかねないのみならず,国民の安心安全を軽視するものである。かかる結果は,消費者行政の推進を政府の基本方針として定めた閣議決定にも反している。
   また,消費者庁と一体として機能すべき国民生活センターの移転も同様に消費者行政の停滞を招きかねず相当ではない。    

4 以上から,当会は,消費者庁及び国民生活センターを地方に移転することは,両者が持つ機能,役割を大きく低下させ,消費者行政の推進を阻害し,国民の安全安心を軽視するものとして,強く反対する。


                     

2016年(平成28年)1月19日
 秋田弁護士会
  会長 京  野  垂  日

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