夫婦同姓の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所の判決を受けて家族法における差別的規定の改正を求める会長声明
2015年12月16日,最高裁判所大法廷は,夫婦同姓を強制する民法第750条について,「婚姻の際に氏の変更を強制されない自由は憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない,夫婦同氏制それ自体に形式的な不平等が存在するわけではない,夫婦同氏制は直ちに合理性を欠く制度と認めることはできない等の理由により,憲法第13条,同第14条,同第24条に違反しておらず,それを放置してきた立法不作為も違法と評価されるには至っていない」旨を判示した。
しかし,2010年5月31日の当会会長声明でも述べたとおり,婚姻する夫婦の大部分が夫の姓を選択している現実の中で,姓の変更を望まない女性は事実上改姓を余儀なくされ,職業上も社会生活上も様々な不利益を被っている。氏名は人格権の一部を構成するものであり,婚姻前の姓を継続して使用する権利は,自己のアイデンティティ確保のため,十分に尊重されなければならないのであり,多くの女性が被っている現実の不利益に照らせば,今回の判決は不当である。
一方,同日,最高裁判所は,女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条の規定のうち,100日を超える部分が憲法24条2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことが明らかであるとして,憲法14条1項に違反するとともに,憲法24条2項に違反するものの,それを放置してきた立法不作為は違法と評価されるには至っていないと判示した。
しかし,違憲の判断をしたことについては一定の評価はできるものの,山浦善樹裁判官の反対意見にあるとおり,DNA検査技術の進歩により生物学上の父子関係を科学的かつ客観的に明らかにすることができるようになった段階においては,血統の混乱防止という立方目的を達成するための手段として,再婚禁止期間を設ける必要性は完全に失われており,100日を超えない期間についても,女性にのみ再婚禁止期間を存続させるべき理由はない。
当会は,これまで,2010年および2013年の会長声明において,選択的夫婦別姓の導入をはじめ,家族法の差別的規定の改正を求めているが,改めて,国に対し,民法第750条及び同第733条を速やかに改正することを強く求める。
2015年(平成27年)12月24日
秋田弁護士会
会長 京 野 垂 日