憲法改正手続法の施行延期を求める会長声明

2010年5月11日 公開
 憲法改正手続法の施行期日が2010年(平成22年)5月18日と目前に迫っている。
 同法の法案審議に当たり,当会では2006年(平成18年)9月12日に政府与党案と民主党案に対する反対決議を行い,2007年(平成19年)4月9日には慎重審議を求める会長声明を発している。そこでは,憲法の最高法規性と国民主権の観点から,投票運動における公務員等に対する運動制限が広範であること,最低投票率の規定がないことなどの問題点を指摘した。しかし,本法は,国会における十分な審議がなされないまま,参議院の調査委員会が実に18項目に及ぶ附帯決議を行ったうえで可決成立し,2007年(平成19年)5月18日に公布された。
 この法律自体が抱える問題はこれまでに指摘したとおりであるが,国会は,附帯決議がなされた事項についての審議をほとんど行っていないばかりか,同法の附則に規定されている国民投票に必要な措置すら講じていない。すなわち,附則3条1項では,「国は,この法律が施行されるまでの間に,年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法,成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」と規定しているが,現在まで民法の成年年齢に関する議論がなされているものの,未だ決着を見ておらず,必要な法整備はなされていない。また,附則11条では,「国は,この法律が施行されるまでの間に,公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう,公務員の政治的行為の制限について定める国家公務員法,地方公務員法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」と規定しているが,これについては正式な検討すらされていない。
 憲法改正国民投票は,主権者である国民が,国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するものであり,最も重要な主権行使である。したがって,国民投票にあたっては,国民が自由に自己の意見を表明することができ,憲法改正案及びそれに対する意見の周知・広報が公正・公平になされるなど,主権者の意思形成が適確に行われ,国民投票の結果に国民の意思が正確に反映される方法が採用されなければならない。ところが,前述のとおり,国会が自ら定めた必要な措置を講ずることなく本法を施行することは,到底許されるべきものではない。
 よって,当会は,本法の施行期日の延期を求めるとともに,引き続き抜本的な見直しをするよう強く求めるものである。
                           以上

2010年(平成22年)5月11日
 秋田弁護士会
   会長 狩 野 節 子

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