民法(家族法)の早期改正を求める会長声明

2010年5月31日 公開
 選択的夫婦別姓や婚外子の相続分差別撤廃等を内容とする法改正は、平成8年の法制審議会の答申以来、現在まで実現していない。
 現行夫婦同姓制度の下、婚姻する夫婦の大部分が夫の姓を選択している現実の中で、姓の変更を望まない女性は事実上改姓を余儀なくされ、職業上も社会生活上も様々な不利益を被っている。氏名は人格権の一部を構成するものであり、自己のアイデンティティとして婚姻前の姓を継続して使用する権利は、憲法に照らして十分に尊重されなければならない。先進国の中において、婚姻後の夫婦同姓を強制しているのは日本のみである。昨年9月以降に複数の新聞社により実施された調査では、いずれも選択的夫婦別姓導入に賛成する者の数が反対する者の数を上回っている。政府及び国会は、このような国民の声を真摯に受け止めるべきである。
 また、婚外子の相続分差別は、婚外子自身の意思や努力によってはいかんともしがたい事実をもって差別するものであり、憲法13条、14条及び24条2項に反することは明らかである。最高裁においても、相続分差別を撤廃すべきであるとの意見が繰り返し述べられている。国際人権規約や子どもの権利条約等は、出生によるあらゆる差別が禁止しているのであり、婚外子の相続分差別の撤廃も国際社会の趨勢である。
 さらに、女性にのみ課される再婚禁止期間についても、DNA鑑定等による父子関係の確定が容易になっている現在においては、既に男女間に差を設けるべき合理的根拠が失われている。加えて、婚姻年齢の男女間の統一も、今や憲法14条から当然に要請されるものである。
 国連の各種委員会は、平成5年以来、日本政府に対し、家族法改正を勧告し続けてきた。とりわけ、平成21年の女性差別撤廃委員会は、上記改正を最優先課題として指摘し、2年以内の書面による詳細な報告を求め、再度早期改正を行うよう厳しく勧告している。
 当会は、選択的夫婦別姓の導入をはじめ、家族法の差別的規定の改正が速やかに実現されることを強く求める。

2010年(平成22年)5月31日
 秋田弁護士会
   会長 狩 野 節 子

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