労働者派遣法の抜本的な改正等を求める会長声明
2008年11月17日 公開
本年11月4日、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「派遣法改正案」という。)が閣議決定され、臨時国会に上程された。
当会は、同年9月に、「労働と貧困」をテーマとするシンポジウムを秋田市で開催し、非正規労働者の拡大や、母子家庭の貧困、多重債務者の実態などについて、問題点を指摘した。
日本弁護士連合会も、同年10月3日、人権擁護大会において「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」を採択し、非正規雇用の増大に歯止めをかけワーキングプアを解消するための提言を行い、特に、労働者派遣については、日雇い派遣の禁止と派遣料金のマージン率に上限規制を設け、登録型派遣の廃止を含む抜本的改正を行うべきである、と提言した。
ところが、今回国会に上程された派遣法改正案は、日弁連の提言等に大きくかけ離れており、次のような問題がある。
すなわち、
1 日雇い派遣について、30日以内の期限付雇用労働者の派遣を原則的に禁止としてはいるが、他方で、政令において広範な例外業務を認めているため、実質上日雇い派遣を公認している。
2 30日を超える短期雇用を容認しているため、派遣労働者の不安定雇用を是正することにはならない。
3 派遣料金のマージン率について、平均的なマージン率の情報提供義務を課すに止めて、上限規制を設けていないため、派遣労働者の低賃金を是正し待遇を改善することにはならない。
4 派遣先に仕事があるときだけ雇用される登録型派遣については禁止の方向とはせず、派遣元事業主に対して、直接常用雇用を促進するなどの努力義務を課しているにすぎない。
この他、全体として抜本改正には程遠い極めて不十分な内容となっている。
したがって、今回の派遣法改正案は、ワーキングプアを解消し、派遣労働者の雇用と生活を安定させるものとはなっていない。
よって、当会は、派遣法改正案に反対し、国会に対し、拙速な審議、改正を避け、派遣労働者の雇用と生活の安定のための労働者派遣法の抜本的な改正を早急に行うことを求める。
2008年(平成20年)11月17日
秋田弁護士会
会長 佐々木 優