法律扶助予算の拡充を求める会長声明

2002年5月21日 公開
 民事法律扶助法が平成12年4月21日に成立し、同年10月1日より施行されたが、同法第3条は民事法律扶助事業について必要な措置を講ずるよう努めることは国の責務であると規定している。民事法律扶助事業の実施に当たっては財政的裏付けが必要不可欠であることは論を待たないところであり、同法の採決において、衆・参法務委員会は「財政措置を講ずるよう努めること」と付帯決議している。

 ところで、民事法律扶助事業の実施の指定を受けている財団法人法律扶助協会は、国に対し、平成13年度の民事法律扶助事業の補助金として、59億8、000万円の要望をしたところ、国の決定額は25億7、500万円弱であり、その後の補正額2億8、000万円を加えても約28億5、500万円にとどまった。一方、同年度に扱った財団法人法律扶助協会の事業のうち、代理援助の件数だけでも全国29、854件に及んでおり、財源不足のため、年度末には、同協会秋田県支部においても自己破産の利用を制限したり、申し込みは受け付けても扶助決定を4月以降とするなどの措置をとらざるを得ない状況になった。

 そのため、財団法人法律扶助協会は、平成14年度の民事法律扶助事業の補助金として66億円を要望し、法務省は36億円の概算要求をまとめたものの、内閣府及び財務省の査定を受け、平成14年度の国庫補助金は30億円とされ、結果として大幅に圧縮された。

 しかしながら、平成14年度の代理援助の件数は全国40、000件に近づくことが予測されており、このままでは年度途中で財源不足に陥ることは必至であり、上記予算では民事法律扶助制度の破綻を招き、経済的弱者の司法へのアクセスを閉ざすことになる。

 民事法律扶助制度は、憲法32条の裁判を受ける権利を実質的に保障する制度であり、財政上の理由から右権利の保護を制限することは許されないと言わなければならない。

 よって、秋田弁護士会は、国民の基本的権利である裁判を受ける権利を実質的に保障し、国民の司法へのアクセスを確保するために、国が早急に扶助予算の増加について格段の配慮をなされるよう強く要望するものである。

平成14年5月21日
 秋田弁護士会
   会長 柴 田 一 宏

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