国民生活審議会「消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて(意見)」に対する意見

2008年5月22日 公開
第1 はじめに
 標記意見について,当会は,基本的に賛成である。
 消費者行政については,これまで,監督官庁が産業育成中心となっていてそれに必要な範囲でのみ消費者行政をおこなっていたことから,縦割りによる規制の漏れ,消極的対応,消費者行政に対する予算・人員の削減など,消費者行政は十分な体制にはほど遠い状況となっていた。消費者・生活者を主役とした行政への転換をはかり,消費者政策の企画・執行を担う「新組織」を設置し,強力な総合調整機能,関係省庁に対する勧告権限を持たせる標記意見書は,その方向性として,正しいというべきである。
 なお,今回の意見募集については,個別の論点について意見を求めるものとなっているが,当会としては,秋田県における消費者行政の実情をふまえ,地方消費者行政のあり方について,特に意見を述べることとする。

第2 個別論点について
1 論点12.について
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  消費者・生活者に係る施策の「実効性」を確保するため,消費者・生活者に係る予算の基本方針を決定した上,重点的な施策として推進が図られるよう予算編成プロセスにおいて工夫すること,「新組織」発足後は,新組織に設置される諮問機関において予算の優先度等を審議し,反映させることを検討することが提言されていますが,こうした分野で予算を増やしていくことは必要ですか。また、どのような仕組みが考えられますか(反対の場合は理由を付してご回答ください)。 
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 消費者・生活者に係る施策のための予算増は不可欠である。また,中央官庁としての新組織への予算確保だけではなく,地方消費者行政への予算手当が不可欠と考える。
 地方行政は,財政状況の悪化に伴い年々緊縮予算となっており,消費者行政の重要性について理解しないわけではないけれども,一番最初にカットの対象となる状況にある。そのため,消費生活センターでは,相談数が増加傾向にあるにもかかわらず,人員削減となったり,相談員の身分保障がなく,自治体によっては相談員がおらず,一般職員が業務の片手間で対応するといった状況にある。これでは,情報の集約,ワンストップサービスを実現しようがない。
 国は,国民生活の安全・安心を確保するために必要な実効化策として,地方消費者行政に対して予算手当がなされるように,地方消費者行政に対する支援策,具体的には,消費生活センター設置を義務づけ,消費生活相談員配置義務づけ,相談斡旋,商品テスト,消費者啓発,消費者団体支援等,消費生活センターの業務内容を法令上明記し,これに対する財政支出が国の責任であることを法令上明記すべきである。

2 論点26.について
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 地域における消費者・生活者の安全・安心に関する施策の実効性確保のため,都道府県及び市町村における消費生活センターの相談体制の充実・強化,及び都道府県毎に中核的な消費生活センターの機能を強化すべく制度整備すべきことが提言されていますが,どのような制度が必要だと思いますか。 
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 各市町村に消費生活センターを設置し、その全てにPIO-NET端末と複数相談員体制を確立することが必要である。
 また,都道府県毎に設置する中核的な消費生活センターは、当該地域におけるセンター・オブ・センターとして機能させることが必要である。
 各センターの統一電話番号制(0999など)を採用すべきである。

3 論点27. について
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 地域における消費者・生活者の安全・安心に関する施策の実効性確保の観点から,各消費生活センターにおける助言やあっせんの拡充を図るため,人材・予算の確保,現場で培った専門性等を発揮できるための環境整備などが提言されていますが,賛成ですか(賛成の場合はどのような環境整備が必要かも触れてください)。また,そのような環境整備は国または地方自治体のどちらが担うべきだと考えますか。 
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 賛成である。
 環境整備の具体的な内容としては,①消費生活センターの設置,権限を法令上明記すること,②相談員の複数配置を義務づけること,③相談員が臨時職,非常勤職,雇い止め,低賃金となっている状況を改善し,身分保障を法令上明記すること,④相談員の十分な研修体制を法令上明記すること,を含めるべきである。
 環境整備は,消費者問題が国民生活の安全・安心を確保するための基本的な施策であること,地方行政が財政的に厳しい状況にあることからは,予算措置も含めて国が担うべきである。
以 上 

2008年(平成20年) 5月22日  
                                            秋 田 弁 護 士 会    
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