故津谷裕貴弁護士殺人事件に対する秋田県警の対応に関し再検証を求める会長声明
1 仙台高裁秋田支部は2月13日,秋田県に対し,故津谷裕貴弁護士の遺族への損害賠償を命じる判決を言い渡した。同弁護士は,2010年11月4日未明,自宅に拳銃や刃物を所持して侵入した犯人により,110番通報で駆けつけた警察官らの眼前で刺殺された。同判決は,警察官らの現場対応について「警察官両名の臨場後の対応は客観的に見て失態を重ねて最悪の事態を招いたものと評価せざるを得ない」と厳しく指摘して同警察官らの過失を認めたものである。
2 本件においては事件発生直後から警察官の現場対応の拙さが報道されたことから,当会は同月9日,秋田県警に対し,現場に駆けつけた警察官の初期対応の点も含め適正かつ公正な捜査が尽くされるよう要望する旨の会長声明を発していた。秋田県議会でもこの問題が取り上げられ,秋田県警は同年12月27日,「秋田市泉北地内における男性弁護士被害持凶器殺人事件に対する秋田県警の対応に関する検証結果」(以下「検証結果」という)を公表した。しかし,同検証結果では警察官らの現場対応の問題点が指摘されておらず,甚だ不十分な内容であったことから,当会は2014年4月21日,秋田県公安委員会に対し,警察法43条の2に基づいて再検証の実施を秋田県警に求め,秋田県警に対しても再検証を実施することなどを要請する要請書を提出したが,現在に至るまで再検証は行われていない。
3 今般,現場対応での警察官の過失が上記高裁判決で認定されたことにより,あらためて同検証結果の不十分さが明らかとなったのであるから,秋田県警は同判決の認定を真摯に受け止め,現場対応の警察官の対応の問題点を再検証し,また,秋田県公安委員会もその再検証を指示すべきである。その再検証によってこそ,事件発生当時に秋田県民が感じた,警察に対する「はたして我々の安全は守られるのか?」という不信感を払拭し,県民の付託に答え,県民の期待と信頼を得ることができるであろう。
よって,当会は,秋田県警及び秋田県公安委員会が同判決の判断を真摯に受け止め,当会が従前から求めていた再検証を実施することをあらためて強く求めるものである。
2019年(平成31年)2月22日
秋田弁護士会
会長 赤 坂 薫