安保法制改正法案の本国会での強行採決を許さない会長声明

2015年9月14日 公開

 現在、参議院において審議中の自衛隊法、武力攻撃事態対処法、周辺事態法、周辺事態船舶検査活動法、国連平和維持活動協力法など10件の防衛関係法律の改正案である「平和安全法整備法案」、及び恒久的な自衛隊の海外派遣を内容とする新規立法の「国際平和支援法案」(以下、これらを総称して「本法案」という。)について、政府は、衆議院と同様、野党の反対を押し切って参議院でも強行採決を企図しているとの報道がなされている。また、参議院の審議が長引いた場合、憲法59条2項に基づく衆議院の再議決により本法案の成立を図ろうとする動きもある。
 当会は、既に、本法案が、憲法9条の恒久平和主義に反して違憲であること、憲法改正手続を踏むことなく憲法の実質的改正をしようとするもので国民主権の基本原理にも反していること、そのほか数々の問題点を挙げて、本法案の廃案を求める会長声明を本年5月21日に発表している。さらに、本法案が衆議院の委員会及び本会議において強行採決されたことに対し、国民の声を無視した与党の専横であって、近代国家の常識である立憲主義に反する暴挙であるとして、これに強く抗議する旨の会長声明を7月16日に発表したところである。
 本法案については、圧倒的多数の憲法学者のみならず、歴代の内閣法制局長官も違憲性や法案の問題点を指摘しているばかりか、元最高裁判所長官もその違憲性を指摘している。また、国民の間でも、本法案が憲法に違反しているとの理解と、日本が他国の戦争に巻き込まれるのではないかとの懸念が広がり、それに連れて、年齢や立場を超えた市民各層による反対運動が全国各地で日に日に盛り上がりを見せている。各種世論調査においても、本法案に反対又は少なくとも本国会での成立を強行すべきではないとする意見が国民の過半数を占めるに至っている。
 政府も、本法案が衆議院において審議されている段階から「国民の理解が進んでいない」と自認していた。
 また、本法案について審議がなされていた参議院の特別委員会においては、防衛省の統合幕僚監部が5月26日の衆議院での審議入りと同時に本法案の成立を前提とする会議を開催していた旨の文書が明らかになった。このような行為は、国会の審議を軽視するばかりか、立憲主義も無視するものであり、政府の国民主権無視の態度を示すものである。
 さらに、ここに至って与党幹部から「国民の理解が不十分でも成立させる」旨の発言がなされている。しかし、多くの国民及び有識者の反対の声にもかかわらず、参議院の委員会及び本会議において、数で勝る与党により本法案を強行採決し、あるいは、憲法59条2項による衆議院の再議決により一院の決議のみで成立させることは、国民主権を無視し、わが国の民主主義を根底から覆す暴挙である。
 当会は、政府・与党が本国会において本法案の採決を強行せず、本法案を廃案とすることを強く求めるものである。

2015年(平成27年)9月14日
 秋田弁護士会
   会長 京 野 垂 日

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