労働者派遣法の改正に反対する会長声明

2015年4月30日 公開

1 平成27年3月13日、政府は、「労働者派遣事業の適正な運用の確保及び派遣労働者の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という。)を閣議決定し、同日、国会に提出した。

  本法案は、平成26年の通常国会と臨時国会で廃案となった改正案を一部修正したものではあるが、派遣労働の常用代替を可能にし得る等の問題点が何ら解消されていない。

2 本法案では「厚生労働大臣は、労働者派遣法の運用に当たっては、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する」と規定している。

  しかし、有期派遣労働者については、派遣先の事業所単位では、3年ごとに過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聴取しさえすれば、仮に聴取した意見が反対意見であったとしても、労働者派遣を延長できることになっている。また、派遣先の部署・部門単位では、派遣労働者個人については上限3年の期間制限があるものの、派遣先は、派遣労働者を3年で入れ替えれば、部署・部門単位で永続的に派遣労働者を使用することができる。

  無期雇用派遣労働者については、派遣期間の制限は一切ない。

  以上のとおり、本法案は、「派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とする」としているものの、実質的には、派遣労働者の永続使用と労働者派遣による常用代替を可能にするものであり、直接雇用される労働者が派遣労働者に置き換えられていくことが容易に想像される。

3 過去の改正案に対して雇用安定措置の実効性がない旨の批判がなされていたことを受け、本法案は、雇用安定措置を法律で規定する旨の修正を加えている。

  しかし、このような修正が加えられたとしても、派遣先の直接雇用や新たな派遣先での派遣就業の保障はなく、雇用安定措置としての実効性はなおも乏しいと言わざるを得ない。

4 以上のとおり、本法案は、過去の改正案における常用代替防止の基本理念に反するという問題点が何ら改められておらず、雇用安定措置も不十分であり、到底是認できるものではない。

  よって、当会は、本法案に反対する。

2015年(平成27年)4月30日
 秋田弁護士会
   会長 京 野 垂 日

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