法曹養成制度検討会議・中間的とりまとめに対する意見書

2013年5月2日 公開

                                              意 見 書

                       秋田弁護士会

                          会 長  江  野    栄


1 第3の1(3) 法曹養成課程における経済的支援

2 意見内容

司法修習生に対する経済的支援の在り方については、貸与制ではなく、給費制として、適切な支援を検討すべきである。

3 理由

中間的とりまとめでは、貸与制を維持すべきとの理由について、「貸与制を導入した趣旨、貸与制の内容、これまでの政府における検討経過に照らし」としか記載がないが、いずれも給費制に比較して貸与制を採用すべき根拠としては不十分である。

貸与制を導入した趣旨として法曹養成制度検討会議で示されたのは、①裁判員制度の導入等、新たな財政負担を伴う司法制度改革の諸施策を進める上で、限りある財政資金をより効率的に活用し、司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な国民負担(財政負担)を図る必要があること、②給費制創設当初と比較して司法修習生が大幅に増加しており、司法修習生の増加に実効的に対応できる制度とする必要があること、③公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは、現行法上異例の制度であること、を挙げていた。

しかし、①、②とも財源が少ないことを指摘するものにすぎず、司法修習を給費制ではなく貸与制にすることの積極的理由付けにはならない。

③については、弁護士の使命及び職務(弁護士法1条ないし3条)を正しく理解しないものと言わざるを得ない。司法修習は、弁護士のみならず裁判官、検察官のいずれになるにしても必ず経なければならないものであり、我が国の司法制度、法の支配を支える不可欠な人材を確保する制度であって、国が責任を持って司法修習制度を運営すべきである。

また、法曹養成に限らず、医師における研修医や、どのような職業でも試用期間が設けられている場合には、有給であるのが通常でその間の生活費は確保されている。むしろ、現行の司法修習制度のみが、強制的に借金を負わせるという異常な制度となっているというべきである。

また、司法修習生は修習専念義務が課されており、アルバイトをすることも禁止されている。これは、司法試験に合格した者に対して、法的問題解決のための基本的な実務的知識・技法と法曹としての思考方法、倫理観、心構え、見識等(法曹としてのスキルとマインド)をしっかりと身につけさせるため、修習に専念させようとするものである。法曹になる者にこのようなスキルとマインドを習得させることが我が国の司法を支えるためには必要不可欠である。中間的とりまとめでは、司法修習生に対する経済的支援について修習専念義務の在り方を検討することとしているが、司法修習生の経済的支援のために修習専念義務を緩和しようとするのは司法修習制度が設けられた趣旨を損なうものであり、本末転倒と言わざるを得ない。しっかりと修習に専念させ、その間の生活費を補償することによって、法曹を養成することが必要というべきである。


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