少年法「改正」法案の参議院における修正を求める声明
2007年5月14日 公開
本年4月19日,衆議院は,少年法「改正」法案を与党単独で採決を強行し,参議院に送付した。
しかし,本法案が少年院収容可能年齢を現行の「14歳以上」から「おおむね12歳以上」に引き下げたことは,小学生をも少年院に収容することを可能とするものであり,極めて問題である。そもそも少年院における集団的矯正処遇が低年齢の少年にふさわしい処遇といえるのかどうか,少年院の側で低年齢の少年に対し万全の態勢で臨むことができるのかについては,何ら具体的な検証がなされていない。
低年齢で非行に走る少年は,被虐待体験を含む過酷な生育歴を有していることが多く,その再非行の防止には,集団的矯正処遇ではなく,個別的福祉的対応こそがふさわしく,低年齢の少年の特殊性を踏まえない厳罰化ありきとの法案には強い危惧感を覚える。
「おおむね12歳以上」なる文言も恣意的に解釈されるおそれがあり,文言としても明確なものとはいえないことも問題である。
また,14歳未満の触法少年の疑いのある者について警察に捜査権限類似の調査権限が付与されたことも問題である。低年齢の少年には福祉的・教育的支援こそが必要であって,犯罪の捜査を職務とする警察は犯罪とされないこの種の事案を扱う機関としてふさわしいとはいえない。また,仮に真相解明の見地から一定の場合に警察の関与を認めるとしても,14歳未満の少年が暗示や誘導を受けやすいという特殊性からは,調査への弁護士の立会いや調査全過程のビデオ録画などによってその調査過程が透明であることが不可欠である。本法案においては,弁護士付添人選任権や少年の情操に配慮する義務など当然のことが加えられたにとどまり,防御権の保障は未だ不十分である。
よって,当会は,参議院において,十分に議論が尽くされ,上記問題点について修正が行われることを,強く求めるものである。
2007年(平成19年)5月14日
秋田弁護士会
会長 木 元 愼 一