自衛隊のイラク派遣の中止を求める会長声明
2004年1月29日 公開
石破防衛庁長官は、本年1月9日陸上自衛隊先遣隊にイラクへの派遣命令を出したのに続き、同月26日、本隊にも、イラクへの派遣を命じた。
これは、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「イラク特措法」という)に基づいて政府が昨年12月9日閣議決定した基本計画を実行に移すものである。
そもそもイラク特措法はイラクにおける自衛隊の武力行使を容認するもので、武力による威嚇、武力の行使を禁じた憲法9条に違反するおそれが極めて大きく、日弁連(日本弁護士連合会)はじめ多くの弁護士会がその制定に反対し、同法にもとづく基本計画を閣議決定しないよう求めてきたところである。
加えて、イラク特措法制定時とは、現在のイラクの現状が大きく変化してしている。すなわち、イラクでは、その治安がますます悪化し、国際機関や外交官の安全すら確保されていない状況にある。1月12日には、来日中の米統合参謀本部議長が、イラクは今どの地域も危険である、と明確に述べたところでもある。このため、国連、国際赤十字等も要員をイラクから撤収している状況にある。
同法によれば、自衛隊の部隊は「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」において「人道復興支援活動」の実施を中心としつつ、「安全確保支援活動」も行うものとされている。ところが、上記の通り、部隊の活動地域と定めたバクダッドにしろ、サマーワ市周辺にしろ、いまだ「非戦闘地域」と認めるには困難なことが窺われる。
こうした状況下のイラクに、自衛隊員を重装備させて部隊として派遣することは、米・英軍主導の占領体制の補完・協力勢力と受け止められて格好の攻撃目標となりかねない。その結果、自衛隊員等が死傷する不幸な事態を招来しかねないばかりか、自衛隊員がイラク国民に対し武力行使せざるを得ない事態が発生するおそれが大きい。このような事態を招くイラクへの自衛隊の派遣は、「武力による威嚇または武力の行使」を「国際紛争を解決する手段」として「永久に放棄」した日本国憲法に明らかに違反するばかりか、イラク特措法にも反する行為である。
したがって、わたしたちは、日本国憲法の平和原則の観点から、またイラク特措法の派遣要件に該当しないことからも、現状のイラクに自衛隊を派遣することに反対する意思を表明するとともに、政府に対しその中止を求めるものである。
2004年1月29日
秋田弁護士会
会長 虻 川 高 範