骨太の方針2025を踏まえ、改めて谷間世代に対する是正措置を求める会長声明

2025年10月28日 公開

 司法試験に合格した後、約1年にわたって司法修習を行う司法修習生に対して、平成23年、それまで支払われていた給与が廃止され(「給費制」の廃止)、同年に司法修習を開始した新第65期から司法修習は無給となり、最高裁判所が司法修習生に対しその申請により司法修習期間中の生活費を貸し付ける「貸与制」が導入された。その後、平成29年4月19日、裁判所法の改正により修習給付金制度が創設され、第71期以降、司法修習生に対して修習給付金が支給されている。しかし、制度変更の谷間に陥った新第65期から第70期までの司法修習修了者(以下「谷間世代」という。)には遡及適用されず、現在まで是正措置も講じられていないため、谷間世代は経済的負担を負ったまま取り残されている。
 谷間世代は、全法曹(裁判官・検察官・弁護士)の約5分の1にあたる約1万1000人にものぼる。彼らは法曹として8~13年目の経験を積み、これからの司法を支える中核として期待される重要な存在である。谷間世代が強いられている経済的負担を軽減することは、彼らが法の支配の実現のためにより力を発揮することを可能とし、ひいては国民全体の利益に資するものである。
 この問題については、司法もその解決を立法府に期待している。令和元年5月30日の給費制廃止違憲訴訟の名古屋高等裁判所判決では、「例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられる」との付言がなされた。
 当会は、これまで、日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、国会議員への陳情等を行うとともに、令和3年5月26日に「谷間世代会員に対する会内施策の実施にあたり、国に早急な是正措置を求める総会決議」を採択し、国に対する是正措置を求めてきた。特に近年は、谷間世代に対し修習給付金と同額の一律給付や、これに準ずる基金制度の創設を具体的な解決策として掲げ、活動を続けている。
 こうした我々の活動に対し、超党派の国会議員の皆様からも大きな賛同が寄せられている。谷間世代問題の解決を応援するメッセージは、本年5月23日時点で391通にものぼった。
 そして、こうした声が実を結び、本年6月13日に閣議決定された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2025」(いわゆる骨太の方針2025)には、「法曹人材の確保等の人的・物的基盤の整備を進める」と記載され、注記において「公益的活動を担う若手・中堅法曹の活動領域の拡大に向けた必要な支援の検討を含む。」と、具体的な支援の検討がはじめて明記された。これは、日弁連、全国の弁護士会及び弁護士会連合会等の上記の活動の成果が反映されたものに他ならない。
 当会は、この「骨太の方針2025」の記述を、問題解決に向けた大きな一歩と捉えている。今後も日弁連、全国の弁護士会及び弁護士会連合会等とともに、谷間世代問題の解決に向けた活動を継続していく所存である。その上で、当会は、国及び関係機関に対し、この方針に基づき、谷間世代がこれ以上放置されることのないよう、早急に修習給付金と同額の一律給付又はこれに準ずる基金制度の創設という具体的な是正措置を講じることを強く求める。

令和7年10月28日
 秋田弁護士会   
  会長 竹田 勝美

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