秋田弁護士会

最低賃金の大幅な引上げを求める会長声明

2021年6月28日 公開

1 現在の秋田県の地域別最低賃金は,1時間792円(2020年10月1日効力発生)であり,前年から2円の引上げにとどまり,全国加重平均である1時間902円を大きく下回っている。
2 我が国の最低賃金制度は,賃金の最低額を保障することにより,労働条件の改善を図り,もって,労働者の生活の安定等に資することを目的としている(最低賃金法1条)。
  ところが,秋田県の現在の最低賃金では,1日8時間,月に22日間働いた場合の1か月の賃金は13万9392円であり,年間でも167万2704円にしかならない。これでは労働者が生活の安定を確保することは難しい。
最低賃金制度をセーフティーネットとして実効的に機能させるためには,最低賃金の大幅な引上げが急務である。
3 最低賃金の地域間格差が依然として大きいことも問題である。
 秋田県の最低賃金(792円)は全国最低額であり,最高額の東京都(1013円)と比べると221円もの開きがある。
このような最低賃金の地域間格差は,秋田県から有為な人材が賃金の高い都市部に流出することを引き起こすおそれが強い。
現に,秋田県が2015年3月にまとめた「秋田の人口問題レポート」によれば,秋田県は2040年には全産業合計で約11万人の労働力不足に陥るとの推測がなされている。
また,新型コロナウイルス感染症拡大を契機に地方移住への関心が高まっている中,最低賃金の地域間格差はその弊害となるおそれがある。
さらに,コロナ禍において,テレワークを導入する企業が増えているが,最低賃金の地域間格差が是正されなければ,秋田県内の企業で働く人材がテレワークの可能な都市部の企業へと流出することが懸念される。
したがって,最低賃金の地域間格差の是正は,秋田県の人口流出に歯止めをかけるためのみならず,秋田県内の企業の人材確保のためにも,喫緊の課題である。
4 コロナ禍における経済停滞の長期化により,企業の経営状態が悪化する中で,企業の存続のため最低賃金引上げの凍結を求める意見も強い。
しかしながら,最低賃金を決める要素で重要なのは「労働者の生計費」である。企業の賃金支払能力によってこの労働者の生計費が変わるわけではなく,前述のとおり,年間167万2704円の賃金では労働者の生計費は絶対的に不足している。
また,イギリス,フランス,ドイツなどの諸外国では,コロナ禍で経済が停滞する状況下においても最低賃金の引上げを実現しており,我が国においてそれが不可能である理由はない。
そして,企業が最低賃金の引上げに対応できるようにするために,新型コロナウイルス感染症拡大に関連した企業への支援,休業を要請している業種に対する補償の充実,税金や社会保険料の減免措置のほか,最低賃金引上げに伴う中小企業への支援策である「業務改善助成金」制度の利用の拡充が急務である。
5 以上より,当会は,労働者の健康で文化的な生活の確保を実現するとともに秋田県の地域経済の健全な発展を持続させるため,秋田地方最低賃金審議会に対し秋田県の地域別最低賃金の大幅な引上げを答申することを求めるとともに,中央最低賃金審議会に対し地域間格差を縮小しながら全国全ての地域において最低賃金の引上げを答申することを求めるものである。

2021年(令和3年)6月28日
 秋田弁護士会
   会長 山 本 隆 弘

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