秋田弁護士会

憲法記念日を迎えての会長声明

2021年5月6日 公開

1 日本国憲法が施行されてから本日で74年が経ちます。
 日本国憲法は、すべての国民が個人として尊重される社会を理想とし、基本的人権の尊重を基本原理としています。このことは、74年の間に国民の意識に確実に根付いてきました。
 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として、以下に述べるように、基本的人権が侵害されかねない事態が生じています。

2 本年2月13日、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)と「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(特措法)の一部改正規定が施行されました。新型コロナウイルスの感染拡大を収束させるための施策は必要ですが、これにより基本的人権が不当に侵害されないよう、慎重な運用が求められます。
 国会も、「罰則・過料の適用に当たっては、国民の自由と権利が不当に侵害されることのないよう、慎重に運用すること。さらに、不服申立てその他救済の権利を保障すること。」と附帯決議しています。

3 まず、感染症法の改正は、正当な理由なく入院措置に応じない者、入院先から逃げた者及び積極的疫学調査を拒否等した者に対し過料を科すというものです。これは、個人の移動の自由や自己決定権、プライバシー権といった基本的人権の中でも特に重要とされている権利を制約するものです。これが不当な人権侵害とならないよう、細心の注意が必要です。新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見はいまだ確立されていません。現時点で入院措置が必要と認められる患者について、後日、入院の必要がなかったと判断されることも十分考えられます。したがって,過料を科すことには、抑制的であるべきです。

4 次に、特措法改正によって、まん延防止等重点措置が創設され、知事は、事業者に対して営業時間の変更等の措置を要請・命令し、これに違反した者に対して過料が科されることになりました。
 この命令発出のためには、①事業者が要請に応じない「正当な理由」がないこと、②まん延防止、国民の生命・健康の保護、国民生活・国民経済の混乱防止のため「特に必要があると認めるとき」という要件が定められています。この命令は、憲法が保障する営業の自由の制約ですので、要件を厳格に解釈し、必要最小限の運用をしなければなりません。営業自体に問題があるのではなく、あくまで感染拡大防止という社会の利益のために特定事業者の権利を制限するのですから、各事業者への十分な補償を行うなど代替措置を講じる必要があります。
 また,過料を科すことには、抑制的であるべきです。

5 最後に、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、国民の間に感染者等に対する誹謗中傷や差別的言辞などが見られます。感染者等に対する誹謗中傷は、場合により犯罪や不法行為になります。そのようなことはせず、現下の危機にあってこそ、冒頭に述べた日本国憲法の理念を相互に確認し合い、感染者やその家族、医療従事者の皆さんを支えて参りましょう。
                                     以上

2021年(令和3年)5月3日
 秋田弁護士会
  会長 山 本 隆 弘

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