秋田弁護士会

商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制を緩和する省令の廃止を求める会長声明

2015年2月16日 公開
 本年1月23日,経済産業省及び農林水産省は,商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下,「本省令」という)を定めた。
 当会は2014年(平成26年)4月5日付で公表及び意見募集がなされた商品先物取引法施行規則案に対し,同月15日付でこれに反対する意見書を提出した。本省令は,当初の公表案を若干修正し,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に,一定の年収または資産を有する65歳未満の者に対する勧誘についても,不招請勧誘禁止の例外として容認することを内容とするものであるが,当会は本省令に対しても,不招請勧誘禁止規制緩和に反対する観点から,以下のとおり強く抗議し,廃止を求めるものである。
 本省令は,上記のとおり一定の要件を満たす者に対する勧誘を容認するものである。しかしながら,この要件を満たすかどうかの確認自体が勧誘行為の一環としてなされるものであるから,結局は商品先物取引契約の締結を求めていない者に対して,商品先物業者からの電話・訪問による接触・勧誘を認めることになり,本省令は実質的には,商品先物取引の不招請勧誘を解禁するに等しい。本省令は,法律が定める不招請勧誘禁止規制を,それよりも緩やかな別の勧誘規制で置き換えているに過ぎず,法律の委任の範囲を超え,省令によって法律の規定を骨抜きにする違法なものといわざるを得ない。また,本省令は,透明かつ公正な市場を育成し委託者保護を図るべき監督官庁の立場とも相容れないものである。
 そもそも,商品先物取引法における不招請勧誘を禁止する規定は,長年にわたり同取引による深刻な消費者被害が発生し,度重なる行為規制強化がされてもなおトラブルが解消しなかったため,こうした被害を防ぐためには行為規制の強化だけでは不十分であり,顧客の要請に基づかない勧誘自体を禁止すべきであるという,消費者・被害者関係団体の強い要望によって,与野党一致の下で2009年7月の商品先物取引法改正で実現したものである。しかし,その後においても,個人顧客に対して別商品の勧誘により顧客との接点を得ておき,すぐさま通常の商品先物取引を勧誘し多額の損失を生じさせている被害が少なからず発生している。
 本省令では,年収や資産の確認方法として,申告書面を差入れさせたり,書面による問題に解答させて理解度を確認する,などとしているが,これらは従前から多くの商品先物業者が事実上同様のことを行ってきたのであって,その中にあって業者が委託者を誘導して事実と異なる申告をさせたり,あるいは正答を教授したりするといった行為が蔓延し,被害が生じている。これらの確認方法が,委託者保護のために機能するものとは評価できない。
 本省令は,かかる立法経緯及び被害の実態を軽視し,商品先物取引の不招請勧誘を事実上解禁するものであり,消費者保護の観点から到底許容できるものではない。当会は本省令制定に強く抗議し,本省令の廃止を求める。

2015年(平成27年)2月16日
 秋田弁護士会
   会長 加 藤   謙

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