給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める会長声明
2013年1月11日 公開
2012年11月27日から第66期司法修習が開始され、2035名の司法修習生が全国に配属され、秋田県には14名が配属されている。
司法修習制度は、司法試験に合格した者に対し、裁判官・検察官・弁護士のいずれになるにあたっても、法曹として国民の生命・身体・財産等の権利を守る担い手として、高い専門性を有する実務家として十分な能力を身につけさせるために必要不可欠な研修制度として、昭和22年の日本国憲法施行と同時に実施されている。そのような趣旨から、司法修習生は、1年間司法修習に専念する義務を負っているが(裁判所法第67条第2項)、そのことは、兼業・兼職が禁止されていることを意味する。また、司法修習生は、実務の訓練を行うため最高裁判所により全国各地に配属されるが、このことは、司法修習生が、約10カ月間の実務修習のため、実務修習地に新たな生活環境を整えなければならないことを意味する。
このように、司法修習制度が国民の権利擁護の担い手として高度の専門性を有する法曹を育てることが国民全体の利益につながるものであることや、そのような高度の専門性を身につけさせるために修習専念義務があり、かつ、全国各地に配属されるという司法修習生の実態等の理由から、現行第65期までの司法修習生に対しては、司法修習中の生活費等の必要な費用が国費から支給されていた(以下「給費制」という。)。しかし、主に国の財政上の理由から、2011年11月に開始された新第65期司法修習から給費制は廃止され、希望者に司法修習費用が貸与される制度(以下「貸与制」という。)に移行した。
日本弁護士連合会は2012年6月、新第65期司法修習生に対し、司法修習中の生活実態を明らかにすることを目的としてアンケートを実施した。このアンケート結果によると、新第65期修習生の28.2%が、司法試験に合格していながら修習の辞退を考えた、つまり法曹への道を諦めることも検討したというのであるが、そのうちの実に86.1%が、貸与制の導入によって生じる経済的困難を理由に挙げている。
さらに、司法修習生の月平均の支出額は、住居費の負担がない場合が13万8000円であるのに対し、住居費の負担がある場合は21万5800円であった。修習開始に伴い配属地への引越が必要だった司法修習生(全体の約6割を占める)の場合には、引越費用等で平均25万7500円が別途必要になる。
以上のとおり、新第65期司法修習生に対する生活実態アンケートにより、貸与制の不平等さや不合理さが改めて明確になった。司法修習生の多くは大学及び法科大学院の奨学金等の返還義務を負担しているが、修習費用の貸与を受ければさらにその返還義務も加わることになる。こうした経済的負担の重さや昨今のいわゆる「就職難」が法曹志願者を減少させ、有為で多様な人材が法曹の道を断念する一因となっている。
また、秋田をはじめ法科大学院所在地以外の配属地においては、配属された司法修習生の大部分が司法修習のために引越しをせざるを得ないため、その経済的負担の大きさから修習辞退が増加することが予想され、有為な人材が法曹をめざすことに対する障害となりかねない。
そもそも司法修習制度は、国民の権利を擁護するための司法の担い手として、高度の専門性を有する法曹実務家となるための訓練を行わせるものであり、司法というインフラを構築する責任は国にあるのであって、修習専念義務を課しながらその期間中の生活費を保障しないことは、国の責任を放棄するものと言わざるを得ない。
当会は、上記アンケートでも明らかになった、司法修習生が置かれている実態を踏まえ、有為で多様な人材が経済的事情から法曹の道を断念することがないよう、早急に給費制復活を含む司法修習生に対する適切な経済的支援を求めるとともに、新第65期及び第66期の司法修習生に対しても遡及的に適切な措置が採られることを求めるものである。
2013年(平成25年)1月11日
秋田弁護士会
会長 近 江 直 人
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