秋田弁護士会

司法修習費用の給費制復活を求める会長声明

2012年9月24日 公開
 本年7月27日、裁判所法一部改正法案が可決成立した。この改正法では、修習資金の貸与について、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から検討が行われるべきであるとし、政府は法曹の養成に関する制度について新たに設置する機関での意見等を踏まえて1年以内に検討を加えるとしている。また、今回の改正に際しての衆議院法務委員会の附帯決議では、「我が国の司法を支える法曹の使命の重要性や公共性に鑑み、高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成するために、法曹に多様かつ有為な人材を確保するという観点から、法曹を目指す者の経済的・時間的な負担を十分考慮し、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにすること」としている。本年8月21日には、閣議決定を経て「法曹養成制度検討会議」が設置され、同会議において8月28日から検討が開始されている。
 ここ数年法曹志望者が激減しているが、その背景には、法曹となるために要する経済的負担の重さがある。法科大学院の修了に多額の費用を要するのみならず、司法試験合格後も司法修習費用の給費制の廃止(貸与制の導入)がなされたことから、その経済的負担の大きさのため、法曹への志願を躊躇させる要因となっていることは間違いない。
 このような事態は、多様な人材を法曹界にという司法改革の理念に逆行するものである。また、司法権の担い手となる法曹の養成については、国が責任を持つべきであるにもかかわらず、必要とされる司法修習について、司法修習専念義務を課しながら修習費用を全く支給せず無収入を強いるという制度自体、国の責任を放棄しており、不合理なものと言わざるを得ない。
 当会は、「司法修習生に対する給費制の存続を求める会長声明」(2009年10月22日)、「司法修習貸与制施行延期に関する「裁判所法の一部を改正する法律」成立にあたっての会長声明」(2011年2月8日)、「法曹養成制度の全体的な見直しと給費制復活に関する会長声明」(2012年2月9日)など、給費制の維持・復活を強く求めてきた。今般の改正法は、今後行われる法曹養成制度の検討において、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点と法曹の養成における司法修習生の修習の位置づけを踏まえることが明記され、給費制の復活を排除していない。法曹養成制度検討会議では、上記附帯決議で触れられている観点を直視し、給費制の復活に向けた十分な議論がなされるべきである。
 以上、当会は政府に対し、給費制の復活を強く求めるものであり、また、司法修習生に対する公平な経済的配慮の観点から、過去にさかのぼって給費制を復活するよう強く求めるものである。

2012年(平成24年)9月24日
 秋田弁護士会
   会長 近 江 直 人

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