秋田弁護士会

「秋田県の景観を守る条例」改正案等に関するパブリックコメント

2010年6月28日 公開
2010(平成22)年6月28日

秋田県知事 佐  竹  敬  久  殿

              秋田弁護士会        
                      会長 狩  野  節  子

「秋田県の景観を守る条例」改正案等に関するパブリックコメント

 「秋田県の景観を守る条例」(平成5年秋田県条例第11号)の改正素案(秋田県景観条例、以下「本条例案」という。)等について、以下の通り、当会の意見を提出します。
 なお、今回の意見は、十分な検討期間がなかったため、条例や景観計画等の一部に対する意見にとどまっており、改正素案全部に対する意見ではありません。当会は、今後、引き続き調査研究の上、今回意見を述べた事項やその他の事項について、あらためて、意見を述べる予定です。

1 県民の義務と県民参加について

(1)本条例案5条では、「県及び市町村が実施する景観形成に関する施策」につき、県民に努力目標を超える協力義務を課す一方で、以下に述べるように住民参加が十分に担保されているとは言い難く、条例の規定ぶりも不十分である。したがって、住民参加の方策を十分にとらずに県民に施策協力義務を課すことは妥当性を欠く。  
(2)景観法(以下単に「法」ともいう)では、景観計画の策定等について住民等による提案が定  められており(法11条)、他県の条例には、県民の結成する団体について認定を行うなど、住民が参加しやすくなるよう規定を定めているところもある。しかしながら、本条例案には、このような住民参加に関する規定がなく、住民参加の促進が軽視されている。
(3)また、法が景観形成住民協定に関する規定を置いているにもかかわらず(法81条等)、本条 例案では住民協定及び知事による同協定の認定などについて何ら触れられるところがなく、この点でも住民参加を軽視している。
(4)また、本条例案18条は、費用助成等を定めるが、景観形成重要建築物等に係るもののほ か、景観形成住民団体、景観形成住民協定に係るものを含む趣旨を明記し、実効あるものにするほか、運用面において十分な手当がなされることも不可欠である。
(5)以上の通り、本県に即した住民参加の方策について、十分に検討の上、条例に定めるようにすべきである。

2 景観形成における秋田県の役割について

(1)広域景観計画について
 景観法8条では、基礎自治体である市町村による景観計画作成を予定している一方で、景観行政団体に指定されていない市町村の区域については、県が広域的な見地から、広域景観計画を策定することが予定されている。
本県は、秋田県景観計画素案も指摘するとおり、美しい自然景観に恵まれており、その景観も広域にわたるのであるから、その景観形成にあたって、広域的な見地からの景観計画の策定・推進が不可欠である。
 他方で、県内市町村では、景観法に基づく景観行政団体に指定されているのは、秋田市の 他、仙北市、横手市、小坂町のわずか3市1町であり、市町村に十分な体制が整っているとは 言い難い状況にある。
 こうした秋田県の現状を踏まえたときに、広域的景観計画については、県にも重要な責務が課されており、県が広域景観計画を策定する必要性があることは明らかである。
 他県にも、広域景観計画に関する規定を置き、県が主体的に関わる仕組みを持っている例もあるところであり、景観形成における秋田県の役割を考えたときに、こうした規定を整備することは不可欠である。
(2)景観重要建造物、景観重要樹木等の指定について
 また、景観法に定めのある、景観重要建造物、景観重要樹木等の指定についても、本条例案には、これらの指定に関する手続規定をはじめ何ら定めがながない。景観重要建造物及び樹木の指定は、文化財・天然記念物ではなくても可能とされており、地域の景観形成上重要な要素といえる。
 県の役割は「支援(バックアップ)と総合調整」にとどまるわけではないのであるから、これらの指定に関する手続規定の整備についても十分な検討をすべきである。

3 行政、公共的法人の公共事業等の施策と景観保全について

(1)秋田県景観計画素案には、別表第1(公共事業等景観形成基準)4.(1)道路、①路線選定 について「計画区域内に名称旧跡など特に優れた景観資源がある場合には、その保全に努めるとともに、構造物を設置する場合は、周辺景観と調和するように配慮する」と記載されているが、「特に」と限定をすることにより、ごく限られた景観のみを保全する開発優先の思惑が垣間見えるところであり、このような限定は削除すべきである。
(2)景観法は、国土交通省所管であるが、農林水産省、環境省との共同で作成された経緯がある。また、文化財保護法の改正(2004、同法2条)により新たな文化財の1つとして文化的景 観が位置付けされ、景観計画区域内の文化的景観については、自治体が重要文化的景観 の選定について申出をすることになった。
 したがって、本条例案10条2項、11条、16条などの定める協議、指導、基準策定と運用等にあたっては、都市計画課のほか、文化財保護、自然保護などの担当部課が共同関与する仕組みを整備するとともに、県民にオープンな検討を行う手続を整備すべきである。そうでなければ、例えば上記(1)の路線選定などにおいて、その是非、調和のための「配慮」などが適確に判断されないおそれがある。
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