消費者庁長官・消費者委員長人事に関する会長声明
2009年7月8日 公開
1 本年5月29日、消費者庁関連三法が成立し、消費者庁の設置が実現されることとなったが、これまでの産業育成型の行政から、消費者・生活者のための行政に大きな転換をはかるものとなる今回の法整備については、当会としても大いに歓迎するところであり、今後の消費者主権の実現に期待するものである。
そこで重要になるのが、消費者庁長官、消費者委員長、そして消費者委員人事である。これらのポストには、消費者庁設置の経緯・趣旨を理解し、あるべき消費者行政のビジョンを持っている人、そしてなにより、消費者事件の経験が豊富であって消費者事件に精通し、消費者の目線を持った人が選任されることが期待される。また、そうでなければ、せっかくの消費者庁設置による消費者主権の実現は、画餅に帰する結果となるであろう。
2 先般なされた報道によると、消費者庁の初代長官には前内閣府事務次官の内田俊一氏を起用すること、同じく消費者委員会の初代委員長には弁護士の住田裕子氏を充てる方針であることが政府から明らかにされたという。
内田氏は旧建設省出身で、内閣広報官等を歴任してきた元官僚であるが、これまでの消費者行政への関わりは定かではない。一方の住田氏は元検事・元法務省秘書官であり、整理回収機構の担当弁護士として債権回収を債権者の立場から行ってきたという経歴は知るところであるが、これまで消費者事件の経験について消費者の視点に立った活動を行ってきたか否かという点についてみれば、消費者事件を担当する弁護士・弁護団では、それを知る者はいない。住田氏についてはむしろ、その所属事務所の複数の弁護士が消費者金融業者側の代理人として活動していることもあり、消費者事件について、消費者側の立場で被害の救済にあたってきた豊富な経験があるとは思われない。
そもそも、消費者庁及び消費者委員会設置法は、消費者委員長については消費者委員の互選により選任すると定めている(設置法12条)。にもかかわらず、報道によれば、すでに消費者委員長人事は国及び政府主導で路線が敷かれていることになるのであり、この報道が事実だとすれば、これは消費者庁・消費者委員会の出発に影を落とす明らかな法律違反である。このような明らかな法律違反を、国や、野田聖子消費者行政推進担当大臣が行うものとは考えたくないし、消費者委員候補者が追従することはないと信じている。
3 以上のとおり、消費者庁長官及び消費者委員の選任にあたっては、消費者法案の審議経過、附帯決議等の趣旨からも、消費者事件の経験豊富な者の中から、消費者目線を持った者を選任すべきであり、そのためには、日弁連(日本弁護士連合会)とも十分な協議を行い、また、消費者団体などにも意見照会の上で選任すべきである。
そして、消費者委員長は消費者委員の互選で選任され、消費者委員は独立して権限を行使するというのが法律の規定であるから、委員長人事に、国や政府、大臣は介入しないこと、委員の自由な意思に基づく互選により委員長を選任できるよう、住田氏が委員長となることが決定しているかのような報道発言については即時撤回することを求める。
また、人事を含む重要事項がブラックボックス内で不透明なまま事実上決定されてしまうことのないよう、消費者庁、消費者委員会及びこれらの参与会の会議及び議事は公開とすることも、あわせて求めるものである。
2009年(平成21年)7月8日
秋田弁護士会
会長 伊 勢 昌 弘
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