秋田弁護士会

陸上自衛隊情報保全隊による監視活動に抗議し、監視活動の中止と調査結果の全容公開を求める会長声明

2008年2月13日 公開
1 平成19年6月6日、陸上自衛隊情報保全隊及び陸上自衛隊東北方面情報保全隊が、自衛隊のイラク派兵に反対する市民や団体の集会等を監視し、その情報を「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」「情報資料について」といった資料にまとめ分析していたことが明らかとなった。当時の久間防衛大臣も、国会における答弁において、情報保全隊がこのような情報収集活動を行っていたことを認めているが、上記資料には、参加者の個人名や発言内容だけでなく、参加者の写真も情報として収集されていた。
 上記のうち、陸上自衛隊東北方面情報保全隊が作成した「情報資料について」には、平成15年10月から平成16年2月までの、秋田県を含む東北地方における市民や団体による集会、街頭宣伝、ビラ配布等の活動や動向に関する情報が収集・記載されており、自衛隊のイラク派遣に反対する活動や、消費税値上げや年金制度に関する集会等も含まれ、さらには東北地方の市町村議会、国会議員の発言やマスコミ記者の取材活動までもが監視対象とされていたことが判明している。

2 このように、陸上自衛隊情報保全隊が組織的・系統的・日常的に市民や団体の活動を監視してその情報を収集・分析・管理保管することは、国民の自由な意見表明に対する不当な圧力となりかねず、表現の自由・集会の自由に対する強い萎縮効果をもたらすものであるから、憲法21条の趣旨に反する。
  また、陸上自衛隊情報保全隊が、上記集会等の参加者の個人名や発言内容を記録したり写真撮影を行って、これら情報を収集・分析・管理保管することは、国家権力が市民の政治的思想に関する情報を取得するもので、思想及び良心の自由を保障した憲法19条の趣旨に反するだけでなく、個人のプライバシーや肖像権を侵害するもので憲法13条の趣旨に反する。
 そもそも、陸上自衛隊情報保全隊は、自衛隊の保有する内部情報の保全のための組織であり、この目的に必要な限定された範囲での情報収集活動しかなしえないと考えられるので、上記のような市民や団体に対する監視や情報収集活動は与えられた権限を逸脱したものと言える。また、上記監視活動は、陸上自衛隊情報保全隊の情報保全業務のために必要なものでないことも明らかであるから、法令の定める掌握事務を遂行するために必要な場合に限って個人情報の保有が許されるとした行政機関個人情報保護法3条1項にも反する。
 さらに、陸上自衛隊情報保全隊が、このような違憲・違法な監視活動を行ってきたことは、国家権力の濫用を抑制し国民の権利・自由を保障するという立憲主義にも違反する。

3 以上のとおり、陸上自衛隊情報保全隊及び同東北方面情報保全隊による市民や団体に対する監視や情報収集は、違憲・違法なもので許されない。当会は、政府及び防衛省に対して厳重に抗議するとともに、このような監視行為を直ちに中止し、第三者機関を設置するなどして陸上自衛隊情報保全隊の監視活動について調査をしたうえで、その調査結果をすべて公表することを強く求めるものである。

2008年(平成20年)2月13日
 秋田弁護士会
   会長 木 元 愼 一

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