秋田弁護士会

消費者保護基本法改正に関する意見書

2004年2月6日 公開
 国民生活審議会消費者政策部会は、2003年5月に「21世紀型消費者政策の在り方について」との報告書(以下「審議会報告書」という)を取り纏め、その中で消費者保護基本法の見直しを提言している。これを踏まえ、当会は、消費保護基本法の改正について、以下のとおり意見を述べる。


1.消費者の権利の明確化
(1) 審議会報告書では、自立した主体である消費者が自らの利益を確保するよう行動するためには、消費者の権利が明確にされることが不可欠であるとして、次の諸権利を法文に盛り込むことを提言している。
    ① 提供される商品役務に関し安全を確保される権利
    ② 消費者行動に必要な情報を得る権利
    ③ 商品役務について適切な選択を行う権利
    ④ 消費活動による被害の救済を受ける権利
    ⑤ 消費者教育を受ける権利
    ⑥ 消費者政策に意見を反映させる権利
 これ自体評価すべきものであるが、いまだ不十分であり、次の権利を加えるべきである。
    ⑦ 公正な取引条件及び取引方法を提供される権利
    ⑧ 消費者団体を組織し行動する権利
    ⑨ 不招請勧誘を受けない権利
(2) 立法形式として、消費者の権利は、消費者政策の基本理念を示す規定の文中で形式的に触れるのではなく、これとは別に具体的な権利の項目を掲げた規定とすべきである。

2.消費者政策の基本理念
 審議会報告書では、消費者の位置付けを「保護される者」から「自立した主体」に転換することを基本理念としている。しかし、これを過度に強調することは、消費者行政を二次的・補完的なものへと後退させる恐れが強い。むしろ、「事業者と消費者との構造的な格差」が拡大している現状認識を明記し、消費者の権利を実現する責任ある消費者行政の理念を明確に規定すべきである。

3.苦情相談・紛争処理
 国及び都道府県による消費者被害の苦情処理・紛争解決機能の強化を法律の中で積極的に位置付けるべきである。
 各地で道府県消費生活センターの統廃合の動きや消費者行政予算の削減の動きがあり、国においては国民生活センターの直接相談を廃止する動きがある。広域的な消費者被害への対応や事業者規制権限への連携を強化するため、国及び都道府県の苦情相談処理の機能を拡充強化する必要がある。
 また、事業者による苦情処理体制の整備も必要ではあるが、消費者問題の特性に照らすと、事業者と消費者の格差を補いつつ実質的に公正な解決を目指す行政型紛争解決機関の整備を重視すべきである。

4.消費者契約の適正化
 現代的な被害が多発している契約トラブルの分野について、契約適正化の施策を規定すべきである。契約適正化の方策としては、情報提供と選択権確保だけでは不十分であり、公正な取引条件の確保が不可欠である。

5.不招請勧誘を受けない権利
 各種悪徳商法や、先物取引、証券取引、外国為替証拠金取引、デリバティブ取引などの投資取引被害が後を絶たないが、その大きな原因が事業者からの電話、ファックス、訪問、ダイレクトメール、Eメールなど消費者の事前の承諾が無いのに事業者の一方的な勧誘、いわゆる不招請勧誘にある。これら不招請勧誘は、それ自体消費者の生活の平穏を侵害するだけでなく、消費者の冷静な判断を阻害し、これによって財産的損害に止まらず、精神的にも多大の損害を与えるものである。消費者の権利をいわば水際で守るためには、消費者には不招請勧誘を受けない権利があることをを確認し、これを実現する必要がある。

6.国の消費者行政組織
 国の消費者行政組織については、分野別の産業育成省庁が付随的に消費者行政を行うのではなく、消費者庁、少なくとも統一的な消費者行政組織が必要である。また、消費者保護会議については、消費者代表などの外部委員を加えた組織とすべきである。
                                   以上  

                          2004年2月6日
秋田弁護士会        
             会長 虻 川 高 範    
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