秋田弁護士会

秋田県の「防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」素案に対するパブリックコメント

2018年1月16日 公開

1 意見提出の経緯
 近時,全国的に防犯カメラ・監視カメラの設置が急速に広まっており,街頭,駅や公共施設,民間施設,店舗等には,無数の監視カメラが設置されている。
 監視カメラ(防犯カメラ)は,撮影された映像が被疑者の早期検挙につながることもあるが,個人の肖像権やプライバシー権を侵害するおそれがあり,また撮影した映像を場所や時刻等でつなぎ合わせることで,特定人の行動を事後的に把握することも可能となるため監視カメラの無限定な設置,撮影は肖像権やプライバシー権との関係で問題があり,日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年(平成24年)1月19日付け「監視カメラに対する法的規制に関する意見書」(以下「2012年意見書」という。)を公表し,監視カメラの設置・運用の基準及び要件を定めた法律を制定し,規制すべきことを提言した。
 当会も,日弁連の2012年意見書の趣旨を踏まえて,本ガイドライン素案に対し,以下のとおり意見を述べる。

2 ガイドラインの位置づけについて
(1)素案の作成経緯によれば,ガイドラインの対象は,警察や行政が設置している防犯カメラは対象とならず,民間が設置運用する防犯カメラを対象としているとされている。しかし,行政の設置運用する防犯カメラも,プライバシー保護の観点から,その設置運用が適切に実施されている保障はないため,本ガイドラインの趣旨を踏まえて,要綱等を作成,運用されることを求めるべきである。
(2)素案では,設置者の責務等を定めているが,その遵守状況等は,どうやって,把握,確認されるのかは,明らかにされていない。例えば,ガイドラインの対象となる防犯カメラを設置している者が,同ガイドラインに沿った要綱等を作成しているのか否か,また不適切なデータ管理等をしていないか否かなど,県民のプライバシー保護の見地から看過できない事態を,誰がどのように把握,確認されるのか,さらには不適切な管理,提供等をしていたことが判明した場合の措置等は,どうなるのかも,明らかにされていない。このようなガイドラインの位置づけと,今後の実施状況,遵守状況等の把握,確認についても検討すべきである。
 
3 素案第1の2「対象となる防犯カメラ」について
  素案は,ガイドラインの対象となる防犯カメラについて,「犯罪の防止を目的とするカメラ」を要件の一つとし(2(1)),「犯罪の防止の目的を併せ持つカメラ」も対象としている。しかし,この(1)の目的要件は,主観的要件であるから,設置者が,犯罪の防止までは考えていないと主張した場合,本ガイドラインの対象外となってしまうおそれがある。このように,目的要件でガイドラインの適用を容易に潜脱される可能性があるので,少なくとも,不特定多数が撮影される場合は,プライバシー保護の見地から対象にすべきである。したがって,(1)の目的要件は削除し,「不特定多数かつ多数の人が利用する施設や場所に設置され」(2),記録媒体に保存されるもの(3)を,本ガイドラインの対象とすべきである。
 また,対象となる「不特定かつ多数の人が利用する施設や場所」として想定されている設置場所が必ずしも明確とは言えないので,香川県,宮城県のガイドラインのように,対象となる設置場所の例を示すのが適切である。

4 素案第2の3「設置者の表示」について
  素案は,「設置者の表示」をすることを求めているが,例外として,「設置場所から設置者等が明らかである場合は」表示を省略できるとしている。そうだとすると,例えば,JR秋田駅構内や駅ビル内,商店街等も「設置者が明らか」として,表示を省略できる場所になってしまうおそれがある。「設置者等が明らかな場合」とは,会社の敷地やコンビニ内等,利用目的と利用者がある程度限られた空間に設置された場合に限定すべきである。

5 素案第2の7「撮影された画像等の閲覧・提供等の制限」について
(1)素案では,撮影された画像等を第三者に閲覧・提供することを禁止しているが,その例外として第三者に閲覧・提供できる場合として,(ア)法令に基づく場合,(イ)緊急の必要性がある場合,(ウ)「捜査機関等から犯罪・事故の捜査等のため情報提供を求められた場合」,(エ)本人の同意がある場合の4つの例外を許容している。
 撮影された画像を第三者に閲覧・提供することは,プライバシー保護の観点から重大な権利侵害にわたることになるので,その例外は極めて限定され,厳格な手続きに服することが必要である。日弁連の2012年意見書では,捜査機関に犯罪・事故の捜査のため画像を閲覧提供する場合であっても,令状によるべきであるとされている。
(2)ところが,素案では,前記のように,(ウ)「捜査機関等から犯罪・事故の捜査等のため情報提供を求められた場合」も第三者への閲覧等が認められていて,例として「警察の任意捜査への協力」が想定されるとする。また,閲覧だけでなく,提供も認められている。「任意捜査への協力」の必要性は否定しないが,このような例外を許容すれば,歯止めのない「任意捜査」への協力(提供)となり,プライバシー保護は空文化しかねない。
(3)したがって,日弁連の2012年意見書のとおり,画像を第三者に閲覧・提供する場合には原則として令状によるべきであるから,(ウ)の例外は削除されるべきである。
 このような観点から,京都府ガイドラインでは,第三者提供が許される場合として,法令に基づく場合と緊急の必要性がある場合の2点だけを示し,さらに,法令に基づく場合でも画像の複写の提供は原則として裁判官の令状によることとしている。また,三重県ガイドラインでは,(ウ)の場合で閲覧に協力した後,データを提供する場合は,(ア)の令状等の文書に基づくこととされている。
 なお,「事件発生直後における緊急の犯罪捜査」のために,防犯カメラ画像の閲覧等が必要になる場合も想定されるが,犯人が凶器等を所持して逃走しているなどという場合は,被害防止のため,(イ)の「緊急な場合」に該当し,それ以外の場合は,一般の捜査活動と同じであるから,原則とおり,令状が必要としても,格別捜査に支障が生ずることはない。
(4)また,閲覧にとどまらず,画像データが外部に提供される場合の影響を考慮すると,閲覧と提供を分けて,後者の手続きを厳格にすることも必要であり,(イ)の場合や,仮に(ウ)で「閲覧」を認めても,「提供」の場合は,三重県ガイドラインのように,(ア)の令状等の文書に基づくこととすべきである。

6 第2の12「個人情報保護法の遵守」について
  素案では,「法に基づき適正に取り扱うこととします」とあるが,一般的には個人情報に該当する場合は,どのような対応が必要かは十分には認知されていないと思われるので,当該条項にいくつか遵守事項を例示すべきである。



2018年(平成30年)1月16日
 秋田弁護士会
   会長 三 浦 広 久

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