米国政府による国際刑事裁判所赤根智子所長らに対する制裁措置に関する会長声明
アメリカ合衆国政府は、2026年8月18日、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長らを制裁対象に指定し、在米資産の凍結及び米国への渡航禁止等の措置をとった。米国政府はこれまでもICC関係者への圧力を強めてきたが、今回の措置は裁判所の長である所長にまで制裁対象を拡大するものである。
ICCは、1998年に採択された国際刑事裁判所に関するローマ規程に基づいて設立され、集団殺害犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪など国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した個人を訴追・処罰する史上初の常設の国際刑事法廷である。我が国は2007年の加入以来、最大の分担金拠出国として、また裁判官を輩出する国としてその活動を支えてきた。赤根所長は、我が国で長く検察官を務めた後、2018年からICC裁判官となり、2024年3月、日本人として初めて所長に選出された法律家である。
裁判官がその職務として法を適用したことを理由に、当該裁判官個人に不利益を課すことは、司法権の独立の中核を否定するものである。裁判官が判断の内容ゆえに身に及ぶ不利益や報復の脅威にさらされるならば、独立かつ公正な裁判は成り立たない。さらに、制裁に伴う金融システムからの遮断等は個人の不利益にとどまらず職務遂行そのものを妨げるものであり、法の支配の基本原理と相容れない。
法律家がその正当な職務遂行を理由に国家権力から制裁・不利益を受けることは、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士・弁護士会として決して看過することはできない。
よって当会は、困難な状況の中で司法の独立を守り職責を果たし続ける赤根所長らに対し、法曹として深い敬意と連帯の意を表明する。あわせて、日本政府に対し、赤根所長らがその職務を全うできるよう、米国政府への働きかけを含む実効的な対応を求める。
2026年(令和8年)9月28日
秋田弁護士会
会長 山 本 尚 子