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会長声明・決議・意見書

最低賃金の大幅な引上げと全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明

2025年6月27日 公開 

1 厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査令和6年分結果確報」によると、現金給与総額(事業所規模5人以上)での実質賃金指数は、前年から0.3%の減少となり、3年連続での前年比マイナスとなった。
 現在の秋田県の地域別最低賃金は、1時間951円であり、全国で最も低い金額であるが、この金額では、 上記の「毎月勤労統計調査令和6年分結果確報」での正社員を含むフルタイムの労働者(一般労働者)の所定内労働時間である148.7時間で換算すると、賃金は月額約14万1000円、年額約170万円にしかならない。
 最低賃金を決定する際の重要な要素は労働者の生計費(生活のために必要な費用)であるが、例えば全国労働組合総連合(全労連)が2025年5月に発表した最低生計費試算調査によれば、秋田市在住の25歳単身者(賃貸住居に居住という条件)の最低生計費は月25万3580円とされている。この金額で労働時間を月150時間として換算すると、時給1691円が必要である。このように、現在の最低賃金の水準は労働者の生計費に対して絶対的に不足しており、最低賃金制度をセーフティーネットとして実効的に機能させるためには、最低賃金の大幅な引上げが急務である。
2 また、秋田県の地域別最低賃金は、前年から54円の引上げとなったものの、依然として全国最高額の東京都の1時間1163円を212円も下回っており、地域間格差の是正には全く至っていない。
 上記の全労連の調査によれば、地方では都市部に比べ住居費は低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限されることから自家用車の保有を余儀なくされるため、地方と都市部の生計費には地域間格差がほとんど存在しないことが判明している。したがって、地域間での生計費の差を前提とした地域別最低賃金制度はその立法事実を欠いていると言わざるを得ない。
 また、秋田県が「新秋田元気創造プラン」や「政府予算等に関する要望書」で指摘するとおり、全国下位にある賃金水準は、若者などの人口の社会減の大きな要因の一つになっていると考えられる。
 政府は賃金の地域間格差を早急に是正するために、地域別最低賃金制度を根本的に見直し、全国一律最低賃金制度を実現すべきである。
3 一方で、最低賃金の大幅な引き上げは、労働者の生活だけでなく経済に影響を与える可能性が大きく、特に中小企業の経営維持には配慮しなければならない。この点、中小企業が最低賃金の大幅な引上げに対応できるようにするために、原材料価格や労務費などの上昇分を取引価格に転嫁できる公正な取引を確保するとともに、社会保険料の事業主負担分の減免などの、抜本的な中小企業支援策を実現することが不可欠である。
4 以上より、当会は、労働者の健康で文化的な生活の確保を実現し、秋田県の地域経済の健全な発展を持続させるため、秋田地方最低賃金審議会に対し秋田県の地域別最低賃金の大幅な引上げを答申することを求めるとともに、中央最低賃金審議会に対し地域間格差を縮小しながら全国全ての地域において最低賃金の引上げを答申すること及び全国一律最低賃金制度の実施に向けた提言をなすことを求めるものである。

 2025年(令和7年)6月27日
  秋田弁護士会
   会長 竹 田 勝 美


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