憲法記念日を迎えての会長声明
1947年5月3日に日本国憲法が施行されてから、79回目の憲法記念日を迎えました。
日本国民は、先の大戦及びそれに先行する植民地支配における他国民の生命・人権を蹂躙した侵略による加害と、広島、長崎の核兵器による惨害にまで及んだ戦争の痛切な体験から、日本国憲法を制定しました。そして、その前文及び第9条において、平和的生存権の確認、戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を明記し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする国民の決意を示しました。日本は、この恒久平和主義を基本原理の一つとした日本国憲法のもとで、「専守防衛」を旨とした平和国家としての道を長年歩んできました。
しかし、2014年、政府は、それまでの憲法解釈を覆し、集団的自衛権の行使を容認することを閣議決定し、その翌年には安全保障法制関連法(以下「安保法制」といいます。)を制定しました。さらに、2022年12月、安保法制の枠組みに基づき、防衛力の抜本的強化、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や核抑止力への依存等、軍事力に軍事力をもって対抗するという抑止力政策を採る「国家安全保障戦略」等のいわゆる安保三文書を閣議決定しました。このような政府の方針のもと、2015年には約5兆円であった防衛費は、2025年には約8兆7000億円にまで増額され、今年度予算では9兆円を超えました。著しく増額された防衛費により、政府は、大型護衛艦の空母への改修、同空母での運用が可能なステルス戦闘機の取得、反撃能力(敵基地攻撃能力)を有する長射程ミサイルの取得及び配備等を進めています。それらの兵器は、他国の領域を直接攻撃することが可能なものであり、自衛のための必要最小限度の範囲を超え、日本国憲法第9条2項で保持が禁止される「戦力」にあたります。また、政府は、「継戦能力」(戦争・武力衝突等の有事の際に組織的戦闘が継続可能な能力)の強化のため、弾薬等の増産及び大量備蓄も進めています。さらに、政府は、防衛装備移転三原則及びその運用指針を見直し、武器の輸出を救難、輸送、警戒、監視及び掃海のいわゆる「5類型」に限って認める従来の制限を撤廃することを閣議決定しました。それにより、国産及び国際共同開発の殺傷能力をも有する武器の輸出が解禁され、日本が製造した武器により国際紛争が助長され、兵士や市民が殺傷される事態を招く危険性が大幅に高まることとなります。
このような政府の方針は、恒久平和主義に基づいた平和国家としての日本の在り様の根幹を揺るがすものです。
一方、世界では、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻、2023年10月からのハマス等とイスラエルとの間における紛争など、各地で深刻な武力紛争が発生し、未だ継続しているばかりでなく、今年2月にはアメリカ及びイスラエルによるイラン攻撃が始まりました。各地では、多数の市民の生命・身体・生活基盤が深刻な被害を受けており、その様子が連日報道されています。
当会は、今年の憲法記念日にあたり、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から、それらに反する安保法制、安保三文書及びそれに基づく政府の方針に強く反対するとともに、政府に対し世界各地での武力紛争の停止及び外交的解決に尽力するよう求めます。
そして、当会も、恒久平和主義をはじめとする日本国憲法の基本理念と基本原理を堅持していくための活動に引き続き努力していくことを表明します。
2026年5月3日
秋田弁護士会
会長 山本 尚子