生活保護基準の引下げに反対する会長声明

2018年3月9日 公開

1 政府は、2017年12月22日、生活保護基準を引き下げ、生活保護費を年間約160億円削減する内容を含む2018年度予算案を閣議決定した。

2 今回の生活保護基準引下げの考え方は、生活保護の基準を、最貧困層である第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10パーセントの階層)の消費水準に合わせるというものである。

  しかし、生活保護の捕捉率(生活保護基準未満の世帯のうち実際に生活保護を利用している世帯が占める割合)が2割程度と推測される我が国において、第1・十分位層の中には、生活保護を受給することなく生活保護基準以下の生活を余儀なくされている人たちが多数存在し、この層の消費水準を比較対象とすれば、生活保護基準を引き下げ続けざるを得なくなる。生活保護の基準を最貧困層の消費水準に合わせるという考え方に合理性がないことは明らかである。  

第1・十分位層における捕捉率の上昇を図る施策を何ら講じないまま、その層の消費水準に合わせることによって、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を認定判断することは、現実の生活状態を無視して、際限なく生活保護制度の後退をもたらすものであり、憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反するものである。

3 今回の生活保護基準引下げでは、生活保護を受給している世帯のうち約7割の世帯で減額となる。また、児童扶養加算や母子加算は削減され、学習支援費は事後的実費支給となる等、子どものいる世帯に大きな影響を与える内容となっており、貧困の連鎖解消等の子どもの貧困対策にも逆行するものである。

  加えて、生活保護基準は、労働・教育・福祉・税制等の多様な施策の適用基準と連動しているところ、今回の生活保護基準引下げは、国家が国民に保障する最低限度の生活基準(ナショナル・ミニマム)が引き下げられることに繋がる。とりわけ、労働者の最低賃金が全国平均に比べて100円以上も低い秋田県においては、最低賃金への悪影響(引下げ又は引上げの見送り)が懸念される。このように今回の生活保護基準の不合理な引下げは、生活保護を受給していない世帯にとっても看過できないものである。

  よって、当会は、今回の生活保護基準引下げを内容とする予算案に強く反対する。

2018年(平成30年)3月9日
 秋田弁護士会
   会長 三 浦 広 久

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