全面的国選付添人制度の早期実現を求める決議

2011年2月25日 公開
 当会は,政府及び国会に対し,速やかに少年法を改正し,観護措置決定を受けた少年全件に国費によって付添人が選任される制度を早急に実現することを強く求める。

 以上のとおり決議する。
2011年(平成23年)2月25日   
秋田弁護士会   

提 案 理 由

 2007年の少年法改正により,一定の重大事件(故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪及び死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪)については,家庭裁判所が弁護士である付添人の関与が必要であると認めるときという条件があるものの,国選付添人が選任されることになっている。しかし,その選任対象事件は著しく限られており,成人の犯罪の場合は必要的弁護事件(死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件)に,国選弁護人を付さなければならないことと対照的である。
 その結果,2009年5月21日より,被疑者国選弁護対象事件が拡大され,必要的弁護事件について被疑者の段階で国選弁護人を選任することができるようになっているが,少年事件の場合には被疑者段階で国選弁護人が選任されていながら,家庭裁判所に事件が送致された段階で,多くの少年事件では成人とは異なり,国選付添人が選任されないことになっている(2009年に国選付添人が選任された少年は,全国でわずか516人であり,同時期に少年鑑別所に収容された少年1万1241人のうち,わずか4.7%にすぎない)。
 少年事件における付添人は,刑事弁護人のように手続の進行,事実認定及び保護処分が適正になされるよう努めると共に,成長段階にある少年の特質に配慮した上,今後の更生のために少年が事件を見つめ直す手助けをしたり,家庭環境の調整や社会資源の開拓をしたりするなどの職務を行うこともあり,家庭裁判所と協同して少年の更生に資していくという側面も有している。
 成人になっていない少年が犯罪を行う場合には,複雑な家庭環境が遠因になっていたり,少年自身の認識に問題があるなどの事態も見受けられるところであって,審判に向けて付添人による手助けを必要とするという事情は成人の刑事事件と変わらないばかりか,成長過程にある少年であることを加味するならむしろ必要とされている状況にある。
 このような認識のもと,日弁連では,各会員の経済的負担のもと少年保護事件付添人援助制度を創設し,私費で付添人を選任することのできない少年の付添人選任費用を援助することとして,この制度を利用することによって少年が一人で家庭裁判所における審判に臨まなければならない事態が生じないように配慮している。そして,当会では,付添人が十全な活動をなしうるように,その報酬に1件につき相当額の上乗せをすることとして,当会の会員による負担による会費から追加で別途の負担をしている。
 また,家庭裁判所に送致された少年に付添人が選任されていない事態を防ぐために,2008年1月から18歳未満の観護措置決定を受けた少年に無料で弁護士を派遣する当番付添人制度を立ち上げ,2009年10月からは,年齢制限を撤廃し観護措置決定を受けた少年全件に付添人を派遣する制度へと制度を充実させた。
 さらに,被疑者国選弁護事件の対象範囲の拡大に伴い,被疑者段階で弁護人が選任されていながら,その後付添人援助などの利用がなされず,付添人が付いていないといった,いわゆる置き去り事案を防ぐため,少年を対象とした被疑者国選弁護人が引き続き付添人に就任するよう諸種の対応をし,付添人がいない事態を防ぐべく努めている。
 このように,当会では,観護措置決定を受けた少年が何の助けもないまま,一人で審判に臨むことがないよう対策を取ってきた。
 このような取組は全国的に行われているが,それでも弁護士付添人が選任されているのは,少年鑑別所に収容された少年の49.5%,少年院送致処分になった少年の56.5%,成人と同じ刑事裁判によって刑罰を受けるべきであるとして検察官に送致された少年の43.6%にすぎず,成人の刑事被告人の場合にほぼ100%弁護人が選任されていることと比べては大きな差が存在している。
 このことは,弁護士会側で全件を把握し,フォローしていくのが困難であることを示しており,事件の送致を受けた裁判所が観護措置決定がなされた全件について国選付添人を選任できるようにすることが,少年が一人で審判に臨まなければならない事態の発生を防ぐためにも不可欠である。
 また,現状では弁護士各人の経済的負担によって援助制度を構築しているが,これはあくまで全面的国選付添人制度の実現までの暫定的なものとして特別会費によっている状況であって,成人における被疑者国選弁護人制度と同様に,かかる制度を構築するのは国の本来的責務である。
 このような見地からは,少なくとも観護措置決定を受けた少年全件に国費によって付添人が選任される制度,すなわち全面的国選付添人制度を早急に実現する必要があるものであり,少年法を改正し当該制度の制定をすみやかに行うことを政府及び国会に対して強く求めるものである。
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