全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明

2010年1月26日 公開
 弁護士付添人は,少年審判において,非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう,少年の立場から手続に関与し,家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い,少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
 しかし,実際に弁護士付添人が選任される例は少ない。その選任率は,審判に付された少年全体の約8.5%,審判に付された少年のうち少年鑑別所に収容された者に対する比率でも約40%に過ぎない(2008年統計)。成人の刑事裁判において約98.7%の被告人に弁護人が選任されていることと比べると,心身ともに未成熟な少年に対する法的援助は極めて不十分な状況にある。
 このような状況が生じている大きな原因として,少年審判における国選付添人制度の範囲の限定が挙げられる。現在の制度は,主に殺人や強盗などの重大事件を対象とし,国選付添人を選任するか否かは裁判所の裁量に委ねられている。そのため,多くの事件で少年に国選付添人が選任されない事態が生じている。
 さらに,被疑者段階の国選弁護制度の対象がいわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたことにより,「捜査段階で国選弁護人が選任されたにもかかわらず,審判の段階になると国選付添人が選任されない」という事態が生じており,制度上の矛盾は一層明らかである。
 こうした問題状況を受け,日弁連は,少年に対する法的援助を充実させるための臨時的・暫定的措置として,少年保護事件付添援助制度を設けている。これは,全会員の特別会費に基づく少年・刑事財政基金を財源に,国選付添人が選任されない事件の少年・保護者に対して弁護士費用を援助する制度である。
 当会においても,かかる付添援助制度を積極的に利用している。被疑者国選弁護制度の拡大後には,捜査段階で国選弁護人が選任された事件のほぼ全件で,付添援助制度を利用して引き続き付添人活動を行っている。
 しかしながら,捜査から審判に至る一連の手続において,適正手続を保障し,更生を支援するという法的援助を少年に対して与えることは,本来,国の責務である。国による少年への法的援助が成人に対するものよりも不十分である現状は,一刻も早く改善されなければならない。とりわけ,少年鑑別所に収容され身体を拘束された少年については,事件の軽重を問わずその生育歴・家庭環境にも大きな問題を抱えたケースが多いこと,少年院送致などの重大な処分を受ける可能性が高いことから,国選付添人による法的援助を早急に整えなくてはならない。
 よって,当会は,政府に対し,国選付添人制度の対象事件を少なくとも少年鑑別所に送致された少年の事件全件にまで拡大するよう,速やかな少年法改正を求める。

2010年(平成22年)1月26日
 秋田弁護士会
   会長 伊 勢 昌 弘

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