改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明

2009年11月27日 公開
 深刻な多重債務問題を背景として、2006(平成18)年12月、改正貸金業法が成立し、段階的な施行がなされてきた。そして、2010(平成22)年6月19日までの政令で定める日までに、出資法上限金利の引き下げ、収入の3分の1を超える過剰な貸付契約の禁止(いわゆる総量規制)などを含む、同法の完全施行が予定されている。

 この間、政府は多重債務者対策本部を設置して、同本部は①多重債務相談窓口の拡充、②セーフティネット貸付の充実、③ヤミ金融の撲滅、④金融経済教育、を柱とする「多重債務問題改善プログラム」を策定し、行政・民間一体となって多重債務問題に取り組むことによって、多重債務者の大幅な減少につながってきた。自己破産者数も、同法成立前には年間18万人を超える水準であったのに対し、2008(平成20)年は13万人を下回るまでに減少し、着実に成果があがりつつあるところである。
 当会においても、上記プログラムに沿って、行政と連携しての「多重債務者相談ウィーク」を 2007(平成19)年以降実施し(2008(平成20)年からは「多重債務者相談強化キャンペーン」)、大きな成果をあげている。

 ところが最近、消費者金融の成約率の低下により、借りたい人が借りられなくなっている、昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産により資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加していることなどをことさらに強調し、これらを理由に改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める声が一部からあがっている。

 しかしながら、今、多重債務者のために必要とされるのは、改正貸金業法成立後に政府が実施し実際に効果をあげてきた施策の充実であり、この流れを止めることではない。
 借りられない人が増えるというが、「借りて、返す」サイクルから抜け出さなければ、多重債務問題の真の解決にはならない。債務者が相談できる自治体の多重債務対策態勢の整備をいっそう進めることで問題の根本解決を図るべきである。同じように、中小企業の資金調達の制限についてはセーフティネット貸付の拡充が、ヤミ金融が跋扈しようとするならばそれら違法業者の徹底的な摘発が、それぞれ求められているのである。
 完全施行の先延ばしは、これまで生じていた問題の先送りにしかならないものであって、多重債務者、ひいては自己破産者や自殺者の再度の増加を招きかねず、断じて許されない。とりわけ、自らの資力で十分に返済可能な額に借入額を抑え、「借金で借金を返す」ことを防止する総量規制は、多重債務問題の根絶にはなくてはならないものであり、借主のために総量規制を先延ばしすべきだという主張には全く与することはできない。

 そこで、地方消費者行政の充実及び多重債務対策が、この9月に設置された消費者庁の所管ないし共管の事項であり、喫緊の課題であることも踏まえ、当会は国に対し、以下の施策を求める。
 1 2010(平成22)年6月19日までに施行予定の改正貸金業法を、遅くとも本年12月中に  完全施行すること
 2 自治体での多重債務対策態勢の整備のため、相談員の人件費を含む予算を十分確保す  るなど、相談窓口の充実を支援すること
 3 個人及び中小事業者向けのセーフティネット貸付をさらに充実させること
 4 ヤミ金融を徹底的に摘発すること

2009年(平成21年)11月27日
 秋田弁護士会
   会長 伊 勢 昌 弘

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