検察審査会の統廃合に反対する会長声明

2008年5月27日 公開
 最高裁判所は、過去20年間で事件数が年間平均1件未満であった検察審査会を他の検察審査会に統廃合する旨の再編成案を発表した。これによると、全国で201箇所にある検察審査会のうち50箇所、秋田県内では横手地区の検察審査会が廃止されることになる。秋田弁護士会は、以下の理由から、この統廃合案には反対である。

1 検察審査会制度は、公訴権の実行に関し、民意を反映させその適正をはかるために設けられたものであり(検察審査会法1条)、市民が検察権の行使を監視・牽制するほとんど唯一の手段である。
 同法に基づき、全国の地方裁判所本庁と主要な支部地域に検察審査会が設置されているのは、自ら生活している地域で起きた事件の公訴権行使のあり方につき、その地域の住民の意思を反映させるという考えに基づくものである。従って、取扱件数を問題として、検察審査会の統廃合を図ることは、それぞれの地域住民による公訴権行使のコントロールの機会を不当に奪うものであり、適切でない。

2 今回の統廃合案の理由は、検察審査会の審理充実強化のために審査会を事件数に応じて再配置することにより、審査員に選任される市民の負担を軽減し、適正かつ充実した審理をはかるためであるとされている。しかし、秋田県内の地裁・簡裁の刑事事件の新規受理件数や不起訴処理件数については、ここ数年で格別大きな変動は報告されておらず、検察審査会での審査対象となるべき事件は存在している。むしろ、検察審査会での受件数が少ないのは制度趣旨が十分に周知されていないことに一因があると考えられる。
 2004年に改正された検察審査会法では、起訴議決に法的拘束力が付与される場合が認められ、審査補助員制度も新設されるなど制度の機能強化が図られており、この法改正を契機に、国民に対し検察審査会の存在や利用方法を十分に広報し、地域住民が容易に制度を利用できるようにしていくことが必要となる。このような時期に検察審査会の統廃合を行うことは、国民の検察審査会の利用を阻害するものであり、適切でない。特に、横手地区を含む秋田県内の各検察審査会は、広域な地域を管轄しているのであるから、地域住民の利便性をより考慮する必要は高い。選任された審査員の負担軽減という点でも、より身近な地域に検察審査会が存在することが必要であると考える。

3 以上のとおり、検察審査会を統廃合する旨の再編成案は、国民の司法参加の流れに逆行し、地域住民の検察審査会の利用を阻害するものであるから、反対である。

2008年(平成20年)5月27日
 秋田弁護士会
   会長 佐々木  優

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