金融審議会金融分科会第一部会の「投資サービス法」制定に関する中間整理に対する意見書

2005年8月25日 公開
2005年8月25日
秋 田 弁 護 士 会 

 金融審議会金融分科会第一部会(以下、分科会という)は、本年7月7日、金融商品に関する横断的な規制を内容とする「投資サービス法」制定に関する「中間整理」を公表した。分科会の「投資サービス法」制定に関する中間整理に対して、以下のとおり意見を述べる。

意見書の趣旨

1 投資サービス法の適用対象(中間整理3~7頁)
 投資サービス法は、全ての金融商品を適用対象とすべきである。特に、国内公設の商品先物取引、オプションを含む全ての海外先物取引等を同法の適用対象とすることは不可欠である。

2 規制内容について(中間整理10~16頁)
 投資サービス法には、最低限、次の行為規制を盛り込むべきである。
  (1)不招請勧誘禁止 
  (2)適合性原則
  (3)説明義務

3 実効性ある法規制(中間整理22~27頁)
 不招請勧誘禁止等の前記行為規制違反に対しては取消、損害賠償、業務停止等の処分を盛り込み、これらの実効性を担保すべきである。

意見の理由

1 上記1について
 (1)「中間整理」では「利用者保護を前提に、活力ある金融市場を構築すべく、現在の縦割り業法を見直し、幅広い金融商品を対象とした法制を目指すことが必要である。」とし、「可能な限り幅広い金融商品を対象とすべきである。」としているものの、金融商品のなかで最も深刻な消費者被害を引き起こしている商品先物取引については、投資サービス法の適用対象になるのかどうか明らかでない。
 同分科会では、商品先物取引の規制官庁である、経産省、農水省が商品先物取引について、投資サービス法の適用対象とすることに反対する旨表明している。
 (2)商品先物取引については、国民生活センターによれば、年間苦情件数が7000件を超えており、10年前の4倍もの被害が引き起こされている極めて深刻な事態にあるという。先物取引被害の発端は、業者の電話、訪問勧誘など、いわゆる不招請勧誘によるものが大半であることが明らかになっている。従って、これを禁止すれば、被害が減少することは明らかである。
 にもかかわらず、昨年行われた商品取引所法の改正では、不招請勧誘禁止すら同法に盛り込むことができなかった。これに比べ、被害では後発というべき外国為替証拠金取引被害では、外国為替証拠金取引を適用対象とし、不招請勧誘禁止も盛り込んだ金融先物取引法の改正がなされたが、その結果、外国為替証拠金取引被害はものの見事に減少していった。
 また、海外先物取引被害についても、同法はもともと政令指定制で、しかも先物取引以外のオプション取引は適用対象となっていないことから、同法を潜脱することは容易なことであった。実際に、海外先物関連では海外オプション取引被害が多く発生していたが、主務省である経産省、農水省は、海外先物規制法を改正するなどしないまま放置してきた。
 こうした例を見ると、消費者被害が深刻な商品先物取引、海外先物取引の分野では、これまでの商品取引所法、海外先物規制法及びこれらを所管する経産省、農水省の下では対処できないことが明らかになり、同法、同省の規制のやり方は破綻していると言わなければならない。
 (3)現在投資サービス法が検討され、同法はできるだけ金融商品全般を対象にし、不招請勧誘禁止や違反行為に対する制裁を盛り込もうと検討されているのであれば、商品先物取引、海外先物、オプション取引など全ての金融商品を同法の適用対象とすることが、これらの被害を防止するうえで期待される。
 (4)今回の中間整理には、被害が深刻な商品先物取引、海外先物、海外商品先物オプション取引について、規制対象にするのかどうか曖昧な表現になっている。しかし、現に深刻な被害を引き起こしている商品先物取引、海外オプション取引を規制対象としない法は、「現在の縦割り業法を見直し、幅広い金融商品を対象とした法制を目指す」投資サービス法の名に値しないと言わなければならない。

2 上記2について
 (1)金融商品の勧誘にあたっては、電話・ファックス、訪問、電子メールによるいわゆるオプトイン型不招請勧誘を禁止すべきである。
 オプトイン型不招請勧誘禁止は、現在、金融先物取引法で規定するのみであるが、投資に関する苦情、被害の多くは、不招請の勧誘に端を発しているのであり、広く金融商品一般について、オプトイン型不招請勧誘禁止を採用すべきである。
 なお、金融先物取引法においては、電話、訪問だけが禁止されているが、不招請勧誘には、これに加えファックス、電子メールも加えるべきものであるから、投資サービス法の不招請勧誘禁止にはこれらも盛り込むべきである。
 (2)適合性原則
 知識、経験、資産が十分でない者に対して、金融商品取引を行わせてはならない。既に商品先物取引、証券取引などの分野では制度として認められているところであるが、これは、投資取引一般に当てはまることである。
 (3)説明義務
 投資取引の内容を十分説明する必要があることは言うまでもないが、重要なことは、元金保証があるのかどうか、危険性とりわけ損をする確率がどの程度なのかなどを、顧客の理解度に応じ、わかりやすく説明することである。

3 上記3について
 (1)不招請勧誘禁止等の行為規制を設けても、違反に対する制裁等が無ければ目的を達しない。
 (2)実効性を担保するためには、行為規制違反に対して、取消、損害賠償、罰則、行政処分等の制裁をそれぞれの目的に応じ課す必要がある。
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