秋田弁護士会

洋上風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見

2017年12月15日 公開

2017年(平成29年)12月15日

 

秋田由利本荘洋上風力合同会社 御中

秋田弁護士会              

会長  三 浦  広 久

 

洋上風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見

 

 (仮称)秋田県由利本荘市沖洋上風力発電事業環境影響評価方法書(以下「本件方法書」という)について、環境影響評価法第8条第1項に基づく意見は、以下のとおりです。

 

第1 総論的意見

 1 設置される発電設備の配置等が検討中であり、確定していないことから、設置される発電設備の配置等を確定する過程における検討事項及びその結果、その判断に至った経緯を詳細に環境影響評価準備書に記載すべきである。

また、設置される発電設備の配置等の確定に際しては、地域住民の理解を得られるよう努めることはもとより、地域住民が設置される発電設備の配置等について、十分検討できるような配慮をすべきである。

2 対象事業実施区域周辺には、既設及び計画中の風力発電設備(陸上及び洋上)が存在することから、これら他事業の諸元等の情報入手に努め、複合的又は累積的な環境影響評価について適切に調査、予測及び評価すべきである。

 

第2 各論的意見

1 対象事業実施区域及びその周辺の概況調査について

本件方法書記載の対象事業実施区域及びその周辺の概況調査では、対象事業実施区域内での波浪観測が行われていないため、対象事業実施区域内での波浪観測を行い、その調査結果を環境影響評価準備書に記載すべきである。

 

2 動物について

(1) 動物、特に鳥類にかかる調査、予測及び評価の手法について

本件方法書での動物、特に鳥類にかかる環境影響の調査、予測及び評価は、いずれも「重要な種及び注目すべき生息地の分布、生息の状況及び生息環境の状況」についてなされることになっているが、風力発電事業により、動物、特に渡りをする鳥類及びコウモリ類の移動の障壁も生じる。生態系への影響が懸念されるところ、このような生物多様性に関係する問題は、本年開催された日本弁護士連合会第60回人権擁護大会で生物多様性の保全を求める決議がされたように、当会としても看過できない問題である。

したがって、移動の障壁についても調査、予測及び評価がなされるべきである。

また、この点については、対象事業実施区域周辺の風車(計画中のものを含む)との累積的影響もあると推測されるので、対象事業実施区域周辺の風車(計画中のものを含む)により変更が予想される移動ルートを基にした環境影響評価がなされるべきである。

なお、上記移動ルートの予測については、外部専門家に意見を求め、その意見も環境影響評価準備書に記載すべきである。

(2) 周辺の既設・計画中の風車の事業諸元の入手について

本件方法書表6.2-12(6-25頁)の第6項には、鳥類の衝突の可能性に関して「対象事業周辺に既設・計画中の風車が存在する場合は、入手可能な事業諸元に基づき、それらを含めた累積的な影響について定性的な予測を行う」との記載があるが、予測・評価に必要な事業諸元はどのようなもので、どのような方法で入手するのかについて、環境影響評価準備書に明示すべきである。

(3) 環境省の手引きに基づく予測と事後調査について

    また、前記第6項では、環境省の「鳥類等に関する風力発電施設立地適正化のための手引き」に基づき鳥類の衝突の可能性を可能な限り定量的に予測するとしているが、同手引きでは事後調査の重要性についても指摘している。本件事業は、これまで類を見ない規模の洋上風力発電事業であるから、事後調査の重要性はより高いと解される。

    したがって、環境影響評価準備書では、事後調査についても言及されるべきである。

 

3 景観について

(1) 景観を損なうおそれについて

由利本荘市沖地域の海岸には、道川海水浴場、西目海水浴場、平沢海水浴場、本荘マリーナなどがある。これらの海岸延長約30kmに140基の洋上風力発電のための風車機が設置されると、ローターの最大直径180mの場合あまりにも近接する(180m×140基=25.2km)。そのため、計画では3列配置とされている。

しかしながら、本件事業では、主要な眺望点から風車を見た際の最大垂直視角は、道川海水浴場、本荘マリーナ海水浴場及び本荘マリーナでいずれも11.6度、島式漁港公園で9.7度とされているが、垂直視角10度から12度は、「目いっぱいに大きくなり、圧迫感を受けるようになる。平坦なところでは、垂直方向の景観要素としては際立った存在になり周囲の景観と調和しえない」となる見え方とされる。

それゆえ、各風車機の南北の間隔を広げても、沿岸から望めば、1列の場合と大きくは変わらない、圧迫感を感じさせる高密度の風車機群の風景となる可能性が大である。これが南北30kmに及ぶ海域の景観となれば、由利本荘市のみならずその周辺地域からの海の風景は、自然のままの景観を失い、秋田港や寒風山などからの鳥海山眺望も損なわれ、秋田県の風土に対するイメージを変えかねないものである。

しかも、秋田県においては、本件事業の外に秋田港洋上風力発電事業、秋田県北部洋上風力発電事業及び能代港洋上風力発電事業の3つについても環境影響評価手続きが進行中である。

美しい自然景観に恵まれた秋田県では、秋田県の景観を守る条例が制定されており、その第1条で本県の豊かな自然に恵まれた景観を守ることを目的としているのであるから、自然のままの景観を失うこと、秋田県の風土に対するイメージが変化することは看過できない。

(2) 方法、手法について

したがって、本件事業の景観に対する環境影響評価については以下の方法、手法を採用すべきである。

① 景観について、秋田港洋上風力発電事業、秋田県北部洋上風力発電事業などとの複合的、累積的影響評価をすべきである。

② 対象事業は風車機や設置方法等について建設計画の細部が明確となっていないため、可能性のある全てのケースについて影響を調査すべきである。

③ 風車が回転している場合と停止している場合の風景の相違について写真を撮影し、環境影響評価準備書に掲載すべきである。

④ 可能な限り、多数の箇所、地点からの景観について調査すべきである。由利本荘市内のみならず、隣接するにかほ市、秋田市はもとより、男鹿市(南磯海岸、入道崎のみならず、寒風山、男鹿三山を含む)からの景観についても調査すべきである。また、フェリーから陸側を望む場合の景観についても調査すべきである。

⑤ 市民、県民が意見を述べやすいように、上記調査・撮影をした景観写真を、環境影響評価準備書に出来るだけ多数掲載すべきである。

⑥ このような大規模計画が県民多数の理解を得られるとは限らないので、事業の規模を大幅に縮小した場合の景観についても調査し、県民の判断資料として提供すべきである。

以 上

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