秋田弁護士会

「憲法改正国民投票法案」に反対する決議

2006年9月12日 公開
 本年5月26日,政府与党と民主党は,それぞれ憲法改正手続きのための国民投票法案,いわゆる「憲法改正国民投票法案」を衆議院に提出した(以下,それぞれ「与党案」「民主党案」という)。
 憲法改正国民投票は,主権者である国民が,国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するというもので,主権者の基本的な権利行使にかかわる国政上の重大問題であるから,あくまでも国民主権及び基本的人権の保障の原理に立脚して定められなければならない。とりわけ,国民投票にあたっては,何よりも投票者各人が自由かつ適切に意思形成できるため,公正・公平で十分な情報提供がなされ,広く国民的議論が不当な干渉なしに自由になされることが必要である。そのためには,国民投票に関する運動は自由でなければならないし,表現の自由が最大限保障されなければならない。また、憲法改正案やそれに対する賛成・反対の意見についての周知・広報が公正・公平になされ、情報が国民に十分伝わるようにされなければならない。更に、国民投票の投票結果に国民の意思が正確に反映される方法が採用されなければならない。
 しかしながら,与党案は,①裁判官等特定公務員等の運動の全面禁止,②公務員の地位利用による運動の制限,③教育者の地位利用による運動の制限等,国民投票運動について罰則付きの禁止制限規定を定め,さらに組織的多数人買収及び利害誘導罪等の罰則を設けている。かような禁止制限規定や罰則は,主権者の基本的な権利行使である国民投票運動の自由の制限としては広範に過ぎるし,構成要件が不明確なため,国民投票運動に甚だしい萎縮効果をもたらしかねない。したがって、投票者各人の自由な意思形成に不可欠な国民的議論が保障されない与党案には重大な問題があるといわざるを得ない。
 また,与党案及び民主党案は,各議院の議員数を踏まえて広告放送時間数や新聞広告の寸法及び回数を割り当てるとしている。しかし、本来、憲法改正案やそれに対する賛成・反対の意見については、議会の多数意思とは別に、公平・中立に国民に提示される必要がある。与党案等では、改正案の広報に各議院の多数意思が強く反映されることになって、その広報が公正・公平になされると言えず,国民の自由かつ適正な意思形成を阻害する危険性がある。
 さらに,与党案は,賛成投票の数が有効投票総数の2分の1を超えた場合に国民の承認があったものとするとしている。しかし,最高法規である憲法の改正という重大性を考えれば,少なくとも改正に賛成する投票数が総投票数の2分の1を越えるか否かで決すべきである。また,与党案及び民主党案は最低投票率制度を導入していないが,国民の意思を十分かつ正確に反映させるためには国民投票が有効となるための最低投票率に関する規定を設けるべきである。このように,与党案及び民主党案は,投票結果に国民の意思を正確に反映させる制度的保障が不十分である。
 「憲法改正国民投票法案」の与党案及び民主党案には,以上に述べたとおり,国民主権とそれを担保するための表現の自由の保障の観点からみて重大な問題がある。当会は,「憲法改正国民投票法」が国民の主権行使という重大事に関わることから,上記のような看過できない問題点を含んだ与党案,民主党案いずれに対しても,これに反対する意思を表明するものである。
 以上決議する。

2006年(平成18年)9月12日
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